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「宇崎ちゃん」から小籔千豊の「人生会議しとこ」まで、昨今の表現規制で気になる事柄

目立つコンテンツに自主規制を強いる世の中

2019/11/28

 人間、誰しも気に入らない表現を見かけたら規制したいと思うものらしく、先日は厚生労働省が小籔千豊さんを起用した「人生会議しとこ」ポスターをめぐって、どこぞの患者団体が抗議するという事件がありました。

小籔さん起用「人生会議しとこ」ポスターに批判…「死を連想させる」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20191126-OYT1T50277/

「患者にも家族にも配慮がない」「誤解を招く」 厚労省の「人生会議」PRポスターに患者ら猛反発
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/jinseikaigi-poster

厚生労働省の作成した「人生会議」のポスター

 なんですかね、これ。

 どうも「誤解を招く」とのことですが、一番誤解を招きそうなのが「小籔さんが倒れたとき、ひょっとして本当にこう思っちゃう人なんじゃないか」と思われることだと思います。いかにも小籔さんこんなこと考えてそう。実際は違うだろうし、それどころじゃないかもしれないけど。

 もともと「人生会議」とはACP(アドバンス・ケア・プランニング)のことで、いつ患者の立場になってもおかしくない私たちが、自身で望む医療やケアについて家族や医療者・ケアチームと前もって考えておき、それを共有する仕組みです。まさに小藪さんが「こんなはずじゃなかった」と語るのは、自分が死にそうなときに思ったような医療やケアを受けられない可能性をシュールにポスターで再現していることに肝があります。

不慮の死を前提にしたポスターである以上

 何にせよ、死を連想させるので掲載をやめろと言ったようですが、これはもう小籔さんが所属する吉本興業に対する陰謀じゃないのかとすら思います。単純に、重病がいきなり判明したり、亡くなられる前に決めるべきことはきちんと家族で話し合って決めておきましょう、という「人生会議」の啓蒙なのであって、どうにもならない不慮の死を前提にしたポスターである以上、これががん患者団体や遺族から反発を受けたところで「死を連想させて何が悪いんだろう?」と。

 それでは、明るい家族団らんのイメージで「おじいちゃん、死んだらどうするか話し合おうね」「そうだな」みたいなポスターなら容認されるのでしょうか。

©iStock.com

 BuzzFeedの取材では「今のところ、直接、届いている抗議文は2通のみ」で、「普及啓発したかったことは、人生の最終段階でどのような医療ケアを受けたいかを話し合っておけば、本人の望むケアが受けられる」ことだと厚生労働省は言ってるようです。気になって私も実際に厚労省に訊いても、関係先へ直接の問い合わせがあったのは本当に2件だったようで、そんなんで不適切判断をしてやめちゃうというのは別の意味で表現の制約・自主規制に至る道だよなあと思います。

 いざというときに話し合わないでいると厄介なことになるよね、という啓蒙用のポスターが、なぜ患者団体からのクレームに晒されるのか理解ができません。