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 なぜかこちらは「環境型セクハラ」という話にまで発展していますが、そういうコンテンツなのである、という前提で、それを好きな人がいて、そういう人たちが献血ルームにやってくる可能性を考えて掲載しているのであって、文句をつけている人たちは基本的にマーケットの外です。もちろん、抗議をしている弁護士が実は日本赤十字などで献血をこまめにしている人だったとかなら多少は考慮されるかもしれませんが、理屈はともかくポスターの中身に文句をつけるのは人間会議の件と同様に「お気持ち」の問題にすぎません。

なぜポスターを貼らなければならないのか

 みんなが気持ちよいポスターを作れとなれば、そりゃタレントがコスプレでもして無難なコピーでポスター作ればいいんでしょうけれども、それはそれで誰にも刺さらない駄目なポスターになるというのは前述の通りで、ましてや献血を促す目的は達成できなかろうと思います。

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「じゃあ『宇崎ちゃん』が献血を促すのか?」と言われれば誰にも分からないわけですけれども、実際には「一般の人に宇崎ちゃんをみせて献血を促す」というよりは「献血に来た人に『宇崎ちゃん』のノベルティがありますよ」程度の告知だろうと思うわけですよ。過去の歴代献血ポスターを眺めてみると、私たちは「なぜポスターを貼らなければならないのか」という見てはならない暗い深淵に目を向けるような気分になります。

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【はたちの献血】 歴代献血ポスター 画像集(羽生結弦、武井咲から若き日のガッキー、まどマギも・・・) - NAVER まとめ
https://matome.naver.jp/odai/2141749078020896901

メッセージ性のあるコンテンツほど「お気持ち」批判に

 突き詰めれば、テレビ番組が低俗だとか、文春砲は下世話だといった類の言説は、コンテンツとして立てば立つほど、メッセージ性が強くなって「お気持ち」による批判に晒されやすくなる、というのが実情なのではないかと思います。

 バラエティ番組がPTAなどから「低俗だ」などと批判されたり、イジメを助長するという観る側の主観で表現の幅を削り取られていった結果、いまや地上波の番組はかつてないほど品行方正で面白みのないものが増えてしまったという残念な実情があります。ポスター然り近所の空き地での野球然り、ノイジーマイノリティの強いクレームから目的意識のある表現を守り、自主規制しなくて済むようなスルースキルを高めることが問われているのではないでしょうか。

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 恐らくは、表現を巡る争いというのは、その表現に嫌悪感を示す一番敏感な人に公共性の軸足を与えると、今回の「人生会議」のように物事を豊かに伝えるための表現の幅が狭くなるという問題に他ならず、つまらない自主規制を強いる世の中になっていくのでしょう。もちろん、小籔さんが面白いのか、このポスターの出来が良いか悪いかは各人の感性による部分は大きいんですけれども、次回があれば、もっと派手に殺される役をすれば、患者団体からの同情も集められるかもしれません。

 ポスターの中で殺された上に「薄っぺらい」批判までされた小籔さんにおかれましては心からお悔やみを申し上げます。

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