子どもの感受性を信じる
――今回の「鬼太郎」は、怖い話はひたすら怖く、ギャグ回はコミカルに、人情話は全力で泣かせにくる、と話の振り幅が大きいですよね。各シナリオはどのようにして出来上がっているのですか?
大野木 各回のシナリオ会議の前に、シリーズ構成の会議があって、怖い話のあとは明るい話にしたり、社会問題を扱った話にしたりなどして、全体のバランスをとるようにしています。あとは、この辺りはねこ娘の登場が少ないから増やそうとか、そういう話をします。この段階で、その回に出てくる妖怪を決めるときもあれば、決めないときもあります。
それで、ギャグ回はギャグが得意なライターに、怖い話は怖い話が得意なライターに割り振っていきます。ひどいときは、妖怪も決まっていなくて、「お笑いでなにかやって」とアバウトな発注をするときも。そうかと思えば、「この社会問題はぜひ採り上げるべきで、原作で似たようなテーマの妖怪がいるから、この妖怪を使って書いて」と具体的に頼むときもあります。
――発注と異なる、予想外のシナリオがライターさんからあがってきたときはありますか?
大野木 ほぼ全話です。ライターには口頭で要求を伝えますけど、詳しいメモを作って渡すわけではないので、どういうプロットになるかは全く読めない。あがってきたプロットを見て、「おっと、こうきたか」と驚くのは毎度ですね。
――子ども向けのアニメにしては、バッドエンドで終わる話も多いです。
大野木 ええ。今回はバッドエンドもOKとプロデューサーの永富大地さんから言われているので。
僕は、子ども向けの話だからバッドエンドにしないという考え方は、あまり好きではないですね。子どもはもっとちゃんと物事を感じていると信じているんです。いい結末を見せたから子どもの性格がよくなる、悪い結末を見せたから悪くなる、という単純なものではなくて、いいものと、悪いものや怖いもの、両方を見せることによって子どもたちの感性は広がる。僕はそう信じています。
おおのぎ・ひろし 1959年生まれ。アニメーション脚本家。1983年、「超時空要塞マクロス」でプロデビュー。数々のロボットアニメの脚本を手がけ、近年は「あたしンち」「ドラえもん」など日常アニメのシリーズ構成をつとめる。2018年より「ゲゲゲの鬼太郎」のシリーズ構成を担当。
※このインタビューの全文は、2019年12月13日発売の電子書籍『ねずみ男大全』に掲載されています。また、発売を記念して、ねずみ男の年賀状キャンペーンを実施。詳細はこちら。