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【熊谷6人殺害】死刑判決破棄して無期懲役 ペルー人被告の想像を絶する「家庭環境」……父はDV男、兄は25人殺人犯

親子3人の遺体をクローゼット内から発見

 午後4時半頃には、民家の物置の中に前かがみになって潜んでいる姿が住人に発見されている。さらにその1時間後、近くの30代男性に路上で「カネ、カネ」と無心し、男性の自動車後部に回って内部を物色。

「何やってるんだ!」

 男性にこう怒鳴られるとナカダは慌てて逃げ出し、足取りが途絶えた。

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 翌14日になり約1・5キロメートル離れた地点で、田崎稔さん(55)、美佐枝さん(53)夫妻が自宅で殺されているのが発見された。

左から2人目がナカダ被告 ©️時事通信社

 社会部記者が語る。

「田崎さん宅で見つかった遺留物からはナカダのDNAが検出され、飲食をした形跡も認められました。また16日午後には白石和代さん(84)が自宅浴槽で殺害されているのが発見された。死亡推定時刻はその前夜から未明にかけて。さらに同じ16日に加藤美和子さん(41)と美咲ちゃん(10)、春花ちゃん(7)の親子3人の遺体がクローゼット内から発見されたのですが、ナカダは母親の美和子さんを殺した後、下校まで姉妹を待って刺殺したと見られています」

 殺害現場に留まりながら潜伏を続けたナカダ。現場にはスペイン語のような“血文字”も残されていたが、解読は不能だという。

 16日午後5時ごろ、警察に追い詰められたナカダは冒頭のように加藤さん宅の2階から飛び降り、頭蓋骨を骨折。意識不明の重体となった。

以前は群馬県の食品製造工場に勤務

 ナカダは熊谷に現れる直前までは、群馬県伊勢崎市の食品製造工場に勤務していた。登録していた人材派遣会社の担当者が語る。

「容疑者から求職の電話があり、7月30日から8月3日までは所沢の工場でコンビニ惣菜の詰め込みをしていました。しかし『流れ作業の早さについていけない』と辞め、8月12日から伊勢崎市の社宅に入り、15日から現地で勤務していました」

 勤務は午前5時から午後2時までで、野菜を切って容器に詰める作業の担当だった。時給1000円で、社宅の家賃は3万円台。事件直前は夜勤のペルー人男性と2DKの部屋をシェアしていた。

「彼とは話したこともないし何も知らないんだ」(同居のペルー人男性)

 近隣の日本人女性の証言。

「よく近くのコンビニに食事を買いに行くのを見かけました。工場で働く外国人は、普通は声を掛けるとみんな片言でも挨拶するのに、彼は俯き加減で目が合うだけで顔を背け、後ずさりするような感じ。『怖いな』と思いました」

 職場には日本人の他にペルー人、パラグアイ人、ブラジル人などが勤務していた。パラグアイ人の夫と勤務する同僚の日本人女性は報道陣に対しこう語っている。

「彼に朝、『おはよう、ジョナタン』と声を掛けても『こんにちは』と返すだけで、後は1日中口をつぐんでいる。みんなで一緒に食べる食事の時もたいてい背を向けて1人で食べていた。誰とも話をしなかった」