――昨年は焼きそば、熟成肉、予約の取れない店が人気ワードだったグルメ界。今年の流行はなにかを「芸能界のグルメ王」渡部建さんと、「タベアルキスト」マッキー牧元さん、「偏愛系フードライター」小石原はるかさんに徹底的に語ってもらいました。
小石原 昨年は何と言っても焼きそばブーム! 「焼きそばが来たらいいな」とあちこちで言い続けていたら本当に来ちゃった(笑)。個人的には焼きそば特需の恩恵に預かった1年でした。
2013年に開店した神保町「みかさ」で焼きそばの概念が変わり始めていたのですが、なぜか昨年、立て続けに8軒以上の専門店がオープン。白金には「焼きそばBAR チェローナ」なんていう、昼は焼きそばオンリー、夜はスペインバル&〆に焼きそばという変わり種店まで出来ちゃいました。
牧元 僕も小石原さんに影響されて、焼きそば店を片っ端から食べに行ったよ。実は焼きそばってのは、けっこう保守的な料理だと思っていたんだけど、いろいろ食べていくと、まだまだ広がりのある料理だなって思いましたね。
渡部 たしかにパスタにあれだけバラエティがあるんですから、焼きそばだって同じですよね。
牧元 そう! だってさ、焼きそばって麺を焼けばいいんだから、ソース味だけじゃなくってなんだっていいんだ。可能性は無限大だと思いますよ。
小石原 じゃ、まだまだいけますよね。焼きそば(笑)。
渡部建 1972年9月23日 東京生まれ。1993年、高校の同級生であった児嶋一哉とお笑いコンビ“アンジャッシュ”を結成。フジテレビ「FNS歌謡祭」のMC、J-WAVE「GOLD RUSH」のナビゲーターを務めるなど、テレビ、ラジオで幅広く活躍。日々の食べ歩きを綴ったブログ“わたべ歩き”も大好評で、年間約500軒飲食店を巡り、日本全国、時には世界各国を食べ歩いている。
マッキー牧元 1955年東京生まれ。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。雑誌連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京・食のお作法』文藝春秋刊、『間違いだらけの鍋奉行』講談社刊、『ポテサラ酒場』辰巳出版(監修)ほか。
小石原はるか 1972年東京生まれ。一度ハマると歯止めの利かないマニアックな気質と頑強な胃袋で、これまでにスターバックス、さぬきうどん、料理人、ホルモン、発酵食品などにどっぷりとハマってきた、人呼んで"偏愛系ライター"。著書に『レストランをめぐる冒険』(小学館)、『東京最高のレストラン2017』(共著・ぴあ)、『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)など。
渡部 僕の2016年は、やっぱり二番手鮨の躍進。二番手鮨というのは20代、30代の若手の職人さんたちのことなんですが、彼らの活躍が昨年の前半から目立ってましたね。四谷「すし匠」の二番手が独立した銀座「鮨 あらい」とか、久兵衛出身の銀座「鮨 竜介」、さいとう出身の銀座「鮨 たかはし」、すぎた出身の新富町「鮨 はしもと」などですね。
小石原 若手鮨は本当に今、元気ですよね。「鮨 竜介」、私も好きです。
渡部 そして地方の名店の東京進出が際立った印象です。岐阜、滋賀、福岡といった地方から地元の厳選した食材を引っさげてやってくる傾向は今年もどんどん強くなると思いますね。僕ら東京在住の者にとってはこれほどうれしいことはない。食材甲子園が東京で開催できちゃいますよ!
滋賀にあった日本料理「しのはら」、岐阜から銀座に移った中華料理「フルタ」の次男が出したフュージョン料理「チウネ」などが代表的ですが、僕は博多に注目しています。東京人って博多というワードが好きですよね。
牧元 そうなんだよね、僕たち博多に弱いんだ(笑)。
渡部 去年水炊き屋の2号店「博多中」を出した「田中田」もそうだし、ちょっと前なら「たらふくまんま」もそう。
小石原 博多で数年前から巻き起こっていたうどん居酒屋ブームが東京にやってきそうですね。中目黒の高架下にオープンした「二◯加屋長介 」が代表格です。
牧元 僕もこれまで、岐阜の「つるつる亭」や名古屋「ミッソーニ」や広島「くりはら」など、全国のうどんを食べてきたけど、うどん居酒屋は間違いなく流行るだろうね。
渡部 恵比寿の「博多うどん酒場イチカバチカ」で思ったんですけど、博多のうどんって柔らかいでしょ? だから飲んだ後でも、噛まなくてもするするっと喉をすべるからいくらでも食える。2種類くらい余裕でいっちゃいますよ。あと、豚バラ巻のような博多屋台の名物も、きっと東京で受けると思いますね。