イラスト 中村紋子

 三月十一日、ボクは仙台のNHKで「3.11 若者たちは、いま」というラジオの生放送に出たの。つらくもあったけれど元気も貰ったわ。

 番組で話してくれた三人の高校生が素晴らしかった! 震災時に小学五年生だった彼らは、自分達の震災体験を語り始めていて、それをまとめた本が『16歳の語り部』(ポプラ社)。男の子一人と女の子二人、家を失くしたり、親友を亡くしたりしているけれど、以前は、震災のことをなかなか話せなかったんですって。被災地だと、たとえば自分はおじいちゃん、おばあちゃんを喪ったけれど、あの家では四人も亡くなっているから我慢しなくては――。そういう複雑な遠慮などがあるのよ。

 特に「未災地」や「災間を生きる」という言葉にハッとさせられた。多くの断層が走る日本列島は、「未だ」災害が発生していない土地でも「未来には」必ず起こる「未災地」。そして今は「災害と災害の間」。災害予防意識の持ち方で被害が大きく違ってくる、というのが彼らの実感。未来のためにも、皆に“自分の事”としてあの震災を考えてほしい、だから体験を語り続けると。それが風化も防ぐというの。凄まじい現実を見てきた彼らの重い言葉に圧倒され、同時に未来への希望を感じたわ。

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『16歳の語り部』の3人の高校生、左から相澤朱音さん、雁部那由多さん、津田穂乃果さん。右端は佐藤敏郎さん(案内役)。 ©共同通信社

 もう一つ番組で感動したのは、岩手県大槌町の木碑。石ではなくあえて朽ちる木で作って、定期的に建てかえるの。今春、建てかえられた木碑の側面に、「誰かの命を助けたいなら 代わりのない自分から」という言葉が加えられた。大槌高校の生徒たちが考えたそう。すごいワ! 最初に逃げるのって、意外や勇気が必要。でも、自分を大切に愛していれば、最初の一歩を踏み出せる。そして、その一歩が誰かを救うのかもしれない。復興も、防災教育も、若者主導で進めれば間違いないと確信できたラジオ出演でした。

16歳の語り部

雁部 那由多(著)

ポプラ社
2016年2月1日 発売

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