子どもの頃パズル雑誌が好きで、その中でも特に好きだったのは「文字の海の中から単語をどれくらい拾い出せるか」というパズルだった。とにかく文字が(ひらがな漢字問わず)ぎっしりと並んでいて、その中から意味の成立している単語を見つけたら丸で囲むのである。量を見つけ出せれば勝ちというルールなので、辞書と首っ引きで選びまくっていた。
そんなことをやっているうちに「あ、この単語の中には別のこんな単語が隠れている」と見出してしまう習慣が自分の中に根付いてしまった。「エスカレーター」の中に「カレー」があるとか、「イラク戦争」の中に「苦戦」があるとか、ついつい発見してしまうのである。さらに言えば文字の配列も必ずしも順列とは限らなくて、「ドン・キホーテ」の中には「手ほどき」があるし、「仮面ライダー」の中には「ラーメン」が隠れていることを、私は見逃したくても見逃せないのだ。うまく「仮面ライダー」に化けたつもりかもしれないが、私の目はごまかせない。お前の正体は「ラーメン」だ!
そして「かめんらいだー」から「らーめん」を取り除いたら残るのは「か・い・だ」。これを組み合わせればまた全く違う文章を生み出すことができそうである。たとえば「課題ラーメン」とか、「ラーメン代か」とか、「ラーメン嗅いだ」とか。こういうふうに文章を一文字単位でバラバラにして組み換えて違う言葉を作り上げてしまう言葉遊びが、今回のお題である「アナグラム」である。
私が初めてアナグラムというものに触れたのは、90年代に日本テレビで放送されていたクイズ番組「マジカル頭脳パワー!!」だ。その中に「シャッフルクイズ」というのがあった。アナグラムで作った文章を出題し、もとの文章が何であったかを当てるというものだった。人名のアナグラムが多くて、「陣内孝則→かなりの異端児」とか、今でも印象に残っている名作もある。そのクイズを見て、「答えを当てる」ことよりも「問題を作る」ことの面白さの方にハマってしまい、小学生なりの知識で一生懸命作っていた。もちろん誰かに出題する予定なんて全くなかったわけだけれど。当時作った「シャッフルクイズ問題」を少し挙げてみる。
桑田真澄→くわたますみ→見渡す熊
三浦知良→みうらかずよし→叱らず見よう
Mr.Children→ミスターチルドレン→珍味ドールレタス