週末の旅は本屋さん、せっかく岩手まで来たのだから(前回 陸前高田 伊東文具店)、足を伸ばして盛岡、さわや書店フェザン店を訪ねた。

 盛岡市は岩手県の県庁所在地、行政、ビジネスにおける東北地方の中核的都市のひとつだが、旧城下町の風情ある街並み、ゆったりした北上川の流れと雄大な岩手山の風景が印象的で、伝統芸能や食文化も魅力的な街だ。本好き、本屋好きにとっては、石川啄木や宮沢賢治の旧跡もあり、地元商店街の歴史ある本屋さんから郊外の新進大手チェーンまでそろった、たまらない本の街でもある。

川の街盛岡を代表する風景。開運橋から岩手山を望む。

 中でも、盛岡駅ビルのフェザン1階に出店するさわや書店フェザン店は、駅を日常的に利用する学生や買い物客、出張のサラリーマンに愛用される地元の本屋であると同時に、そのユニークな、熱のこもった売り場で本屋好きなら一度は行ってみたい本屋のひとつである。

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さわや書店フェザン店。正面の一番目立つ棚には郷土書が並ぶ。

 店頭には、オススメ本がワゴンに大量陳列され、圧倒的なパネルが売り場を埋め尽くす。その熱い言葉と手書きの文字で、ひと目見て「さわやフェザンだな」とわかる情報満載なパネルは、主に、田口幹人店長とスタッフが読んで、今、ここで本当にオススメしたい本に付けているという。巨大なパネルに書くのはそのときどきのアルバイトだが、先輩から後輩へと教えているうちにだんだん雰囲気が似てきて、さわやフェザン流になってくるというから不思議なものだ。

さわやフェザン流のPOPやパネル、付け方にはルールがある。
巨大で、文字があふれて来るような迫力のPOP。

 さわや書店が同じ駅ビル2階に出店している本と雑貨の店D-Styleがスタイリッシュで落ち着いた売り場作りをしているのとは対照的に、あえて、暑苦しいまでの文字量のパネルを付けるのには、田口店長なりの作戦があるという。最近、盛岡市内には、TSUTAYA、M’s EXPO、ジュンク堂が出店し、競争環境は厳しくなっている。いずれも大型店舗で、店舗の広さや品揃えでは勝負にならないが、このパネルを読むことで強い印象を与えることができる。さらに踏み込んで、同じ本を同じ値段で買えるのに、さわやフェザンでパネルを読んで買った本は違うものに見える、そんなことをテーマにパネルを書いているという。

1階のさわや書店フェザン店とは対象的な、本と雑貨の店、SAWAYA D-Style。

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