「こんな番組が成り立つくらい韓国社会の悪質リプライ文化は危険な水準に達しているとみんな思っている。ソルリが司会を引き受けたのは自ら悪質リプライを克服しようとしていたからでしょう」(前出記者)。しかし、同番組にはソルリの死後、「ソルリを追い込んだ」として非難が殺到し、放送終了が発表された。
2度目のバッシングのきっかけはインスタ配信
ソルリが再び、悪質リプライの標的になったのは今年4月。自身のインスタグラムでブラジャーをつけずに、酔った姿でライブ配信を行った際、胸元に言及する書き込みが集中した。それに対しソルリは「視線強姦(*)する人はもっと嫌だ」と言い、物議を醸した。
*……見られる側の意思に反し不快な視線を向けることを指す、韓国におけるネット用語
前出の番組でとりあげられた際に「ブラジャー着用は必須ではなく選択であって、アクセサリー」と再度コメントすると、悪質な書き込みがさらに増殖。また、女性の堕胎を違法とする堕胎罪に違憲判決が下りた際には、「栄光の日ですね。すべての女性に選択権を」とコメントすると、これもバッシングの対象に。
この頃から、ソルリに「奇行」「構ってちゃん」という修飾語がついて回るようになったが、彼女の言動は20~30代の女性から少なくない共感も得ていた。別の韓国紙記者は、「ノーブラ騒動や堕胎罪違憲への意見については女性から支持を受けたのもまた事実。今(韓国)社会に広がる“女性嫌悪”(ミソジニー)がソルリを標的にし、苦しめたという声もあがっています」と話す。
海外で注目されたソルリのフェミニスト的一面
日本の報道ではほとんど触れられていなかったが、ソルリの「フェミニズムのアイコン」としての側面に触れて報道した外信は少なくなかった。
香港の『サウスチャイナモーニングポスト』は、ソルリを「フェミニストファイター」と称し、米国の芸能雑誌『ピープル』は、「スポットライトが当たっている間、自身のフェミニスズム的理想について話をしていたソルリは、保守的な韓国社会を生きる他の同世代と一線を画した」と報じた。同AP通信は、「ソルリはとても保守的な韓国社会でフェミニストとしての主張をし、それを気にすることもなく行動する数少ない女性エンタテイナーだった」と配信している。前出記者は言う。
「女性アイドルは美しく、かわいく、そしてなにより柔順でなければならないというイメージがついて回る。職業がアイドルですからやむを得ないのかもしれませんが、韓国社会が持つ女性のイメージからいったん外れたことをすると、ここぞとばかりに悪質リプライというSNS上での集団暴行が始まります。
ソルリはまだ20代半ばでした。あれほどの悪質なリプライに向き合って耐えろというのは苛酷すぎる。精神が蝕まれてもおかしくありません」