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連載尾木のママで

泣く子も黙る“尾木ママ語”はどうやって生まれたのか

2017/03/30
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イラスト 中村紋子

 ボクが「尾木ママ」になったのは七年前。番組内で明石家さんまさんに突如「ママー」って呼ばれたのがきっかけ。ボクはおネエではないけど、教員時代、勤務先が男子校から共学の中学に変わって、女子の気持ちを知りたくて、交換ノートをやりとりするうちに、女子の口調がうつった。家庭でも妻と娘二人に囲まれたから、女性的な話し方になってる自覚がなかったのね。

 尾木ママになって気づいたのは、“ママ語”だと、言いたいことが伝わりやすいってこと。「所さんの目がテン!」という番組で、こんな実験をしてもらったことがあるの。まず先生役の男性の役者さんが「オネエ言葉」と普通の口調とで、それぞれ十人ずつのグループに、ボクに関する同じ情報を話す。その後で、話の内容を覚えているか問うテストをしたところ、なんと「オネエ言葉」で聞いたグループの正答率がそうでないグループの約一・五倍! オネエ言葉の浸透力が証明されたのよ。

©山元茂樹/文藝春秋

 ボクの講演会にはお子さん連れのママも多く参加してくれる。赤ちゃんや二、三歳児を抱っこして膝にのせたまま聴いてもらってるの。なぜか泣く子が殆どいない。赤ちゃんたちはボクをジィーッと見つめてるのよ(笑)。

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 不思議に思って言語学の専門家に聞いてみたら、ボクのしゃべり方は「マザリーズ(母親語)」の三つの特徴、「やや高い声」「独特の抑揚」「語尾のフレーズを繰りかえす」を備えていて、母親が赤ちゃんに語りかけるような言葉なんですって! ボクは本当に“ママ”なのねって実感したわ。

 講演後には列ができて、小学生の親御さんからは「お利口になるよう頭を撫でてほしい」、妊婦さんからは「元気な赤ちゃんが生まれるようお腹を触ってほしい」と、まるで新興宗教の教祖様(笑)。尾木ママ8年目の今年も、皆さんの心に届くよう、丁寧な愛あるトークを心掛けるワ♥

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