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「グレタさんに、叱られる」日本の環境後進国ぶりを嘆く

そしてなぜマウンドには小泉進次郎が登っているのか

2019/12/19
note

未来の日本人がどうにかするよ、とは言えない

 COPや国連での議論も、結局は二酸化炭素の排出削減を進めましょうという大テーマに戻りました。しかし、二酸化炭素を出さずに十分なエネルギーを国にもたらすためには、原子力発電所に頼るか、超低効率の自然エネルギーを大量に利用するぐらいしか方法がないというのが現実です。

 しかし、大都市圏などで安定的に電力を必要とする以上、どうしても常時電力を発電できるベースロード電源が必要になります。自然エネルギーのように「曇っているので発電できませんでした」「風が吹かないので今日はもう帰ります」という話では洒落にならないので、火力発電所に頼るしか日本には道はありません。

©iStock.com

 あるいは、「世界的な二酸化炭素削減の議論に賛同するために、ベースロードを火力から原子力に切り替えます」と言ってその辺を歩いている反原発派を一人ひとり仕留めて鉄腕アトム時代の原子力ばんざい状態に戻すしか方法がなくなってしまう、というのは実に微妙なところです。私自身も、あの事故を見て、また、原子力発電所の使用済み核燃料の状況を知ると、かなり本気で「これは長く時間はかかっても、原子力発電よりも安全に処理できる仕組みに切り替えないと、人間の手には負えないぞ」と思ったりします。そんなもん未来の日本人がどうにかするよ、とはちょっと無責任には言えないよなあという気持ちになるのです。

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 私たちが生きていくためにはエネルギーが必要だ、でもそれは環境破壊を伴うのだ、というとき、持続的な社会にしていくためには、エネルギー供給の仕方をどうするのか(火力、自然、原子力)、エネルギー利用の効率化をどうするのか、あるいはみんなで死ぬのか、いずれかの方法で対処していかなければならないのでしょう。

グレタさんは偉い。超偉い。あー偉い偉い

 環境問題では地球全体のことを考えすぎて、どうしても二酸化炭素に目がいきがちなのですが、しかし本当の環境問題とは私たちの目の前にあることが大事です。例えば、超大型の台風が来て大量の雨が降ったとき、私たちはこの環境に対応するため水をどう制御するのか。あるいは、都市部では珍しくなくなった局地的な豪雨への対策や、スギ花粉も含めた山の森の植生をどうするのか、さらには気温が高すぎて都市部ではレタスなどの葉物野菜が高騰して供給不安定になったとき安全な代替品をどこからもってくるべきか。世の中には深刻な問題があり過ぎです。

マドリッドで温暖化対策を求めるデモを行うグレタさん ©AFLO

 そういう問題を全部背負って、ヨットや電車で旅するグレタさんは偉い。超偉い。あー偉い偉い。環境問題に思いつめ過ぎて不安に押しつぶされそうになる前に、環境問題に目覚めた若い男女がもっといっぱい出てきて騒ぎを起こしてくれると、もっと改善のスピードは上がるんだろうか。次はもっと感情的に穏やかな奴を頼む。最近毎日そう思いながら日々を暮らしています。

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「グレタさんに、叱られる」日本の環境後進国ぶりを嘆く

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