師走の恒例行事、忘年会をめぐり、「行かない」「行きたくない」人たちの「忘年会スルー」という声にネット上で共感が集まっている。企業において、前近代的な「飲みにケーション」や厳密なタテ関係に基づく上意下達的なコミュニケーション手法がほころび始めていることを象徴する流れと言えるだろう。その根底に透けて見えるのは、社員同士のリアルのコミュニケーションの希薄化や深刻な「職場の孤独」問題だ。
まったく飲めない下戸ではあるが、フリーで仕事をする筆者にとって、忘年会は、お世話になっている人たちや友達と集い、親交を深める貴重なコミュニケーション機会となっている。実際、今回のネット上での盛り上がりも忘年会そのものへのバッシングというよりも、会社の忘年会に半ば強制的に、参加させられるのは納得がいかないと考える人が増えているということのようだ。
行きたくない人も、行きたい人も2~3割ずつ
この職場の忘年会、日本とは趣向が違うが、欧米にも、「ホリデーパーティー」なるイベントがあり、簡素なものから5つ星ホテルで、航空券などの豪華景品付きという華やかなものまで、各種多様で、年の瀬のゴシップネタになることも多い。最近では、大量の飲酒で、セクハラ、暴力などが問題になることもあるが、社員間のコミュニケーション活性化の重要施策と位置付けられている。
一人当たり、数千円からうん万円の費用はすべて会社持ちとはいえ、嫌々ながら参加する社員も、日本同様少なくない。イギリスのある調査では、20%は参加したくない、40%はどちらともいえない、25%は楽しみにしているという割合だったという。
肌感覚的にこうした数値は、日本も、あまり変わらない印象を受ける。田辺三菱製薬株式会社の調査によれば、会社の忘年会に「参加したくない」は15.2%、「どちらかと言うと参加したくない」が29%で合わせて、44.2%が「行きたくない派」だった。一方で、「参加したい」が29.6 %、「どちらかと言うと参加したい」が26.2%と、合わせて55.8%、つまり過半数は参加派だったのである。
要するに、行きたくない人も、行きたい人も2~3割ずつというわけで、組織における、賛成と反対の構成比としては、よくありがちな割合で意見が分かれている感じだが、こうした形で、「否定派」の声が可視化されることで、会社忘年会への風当たりは一気に強まりそうだ。