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ナイキかオーダーメイドシューズか、二極化の時代に

 BS日テレの「密着! 箱根駅伝 春夏秋冬」で東洋大学の酒井俊幸監督が、流しをする選手たちに「前傾で行け!」と口をすっぱくして言っていたのですが、これはヴェイパーの反発を抑えるために体を前傾にして、抱え込むように腕を振ったほうがよりヴェイパーフライの特性を生かせるためにそう言っていたのだと思います。

 また東海大学の両角速監督は最近、自らもヴェイパーフライを履いて大会に出るなど、走り続けています。あれはヴェイパーフライを生かすためにはどうすればいいのか、実際に走ることで両角監督なりの答えを見つけようとしているのではないかと睨んでいます。

 たくさんのランナーが履くことで、ナイキにはさらにデータが集まり、ヴェイパーフライは4年目、5年目にさらなる進化を遂げる可能性が高い。ここにきて他のメーカーも続々とカーボンプレート入りのシューズをリリースしていますが、まだ1年目。これらがプロダクトとして熟成するには時間がかかります。しかも、もはや箱根で履くのは1人か2人。市民ランナーのデータも取りにくくなってきているので、差は広がるばかりです。これからの選手の足元は、ビッグデータをもつナイキか、ミムラボのように職人技で作られたオーダーメイドシューズに二極化するでしょう。

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“自腹ヴェイパー”と“配給ヴェイパー”の見分け方

 最後にマニアックな知識を。ヴェイパーフライ ネクスト%には、実は3種類あります。ピンク、緑、ブルー×オレンジです。これは単なる色の違いではありません。詳細は「あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド2020」にも書きましたが、ヴェイパーフライには自分で買った“自腹ヴェイパー”と、ナイキから支給された“配給ヴェイパー”の2つのタイプがあるのです。今の時期、ピンクと緑のシューズは自腹で買った可能性が高く、ブルー×オレンジは配給ヴェイパーだと思われます。

上智大の2人はサイズが同じだったので、左右交換して予選会に臨んだ

 ちなみに、我々が監修する「あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド」も、ヴェイパーフライと同じく3年目を迎えました。1年目はとりあえず出すところまでで精一杯。2年目は前年にやり残したことをやって、3年目でようやく完成度の高いものができました。1年目、2年目のおかげで協力者も増え、これまでは僕たちの頭の中にある情報でやっていましたが、持ち込みのネタが増えたことで、ここまで熟成させることができた。やはり何事も形にするには3年かかるものなんです。

 2020年の箱根駅伝では、選手の走りだけではなく、どれだけの選手がヴェイパーフライを履くのかにも注目してほしいですね。

構成/林田順子(モオ) 写真/EKIDEN News