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クリスマスに小林幸子化するマライア・キャリー、なぜこんなに面白い?

2019/12/24
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アメリカン・ドリームの体現者でもある

 すっかり面白キャラが定着したマライア・キャリーだが、本国アメリカでは非常に尊敬されるアーティストである。彼女は20曲近くものナンバーワン・ソングを持つチャートの女王だ。今回『恋人たちのクリスマス』が首位を獲得したことにより「Billboard HOT100史上もっとも1位獲得数が多いソロ・アーティスト」の栄光を手にした。

©︎getty

 さらには、歌が上手いだけではなく、R&Bやゴスペル、ヒップホップにも精通する秀でた作曲家でもある。『恋人たちのクリスマス』をふくめて、数々の大ヒット曲は彼女自身が作曲しているのだ。

 歌唱力、作詞作曲技術、マーケティング能力に功績、豪華なヴィジュアル、そして面白さ。ここまでポップな才能が揃ったパーフェクトなスーパースターは、マライアのほかにいないかもしれない。

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©︎getty

 ちなみに、今ではバブリーなキャラが板についているものの、マライアはアメリカン・ドリームの体現者でもある。アフリカ系と白人の両親のあいだに生まれたマライアは、厳しい家庭環境と人種差別、貧困のもと、幼少期を送ってきた。極めて明るい『恋人たちのクリスマス』にしても、当時の思い出が元になっている。

 貧しい機能不全家庭でお祝いを夢見る少女時代に立ち戻って作詞された曲だからこそ、「クリスマスの楽しさ」の表現に重点が置かれており、当時のホリデー・ソングにしては珍しくパーティーのようなアップビート構成なのだ。

『恋人たちのクリスマス』もっとも早く大きな人気を博した日本

 現代のクラシックとなった『恋人たちのクリスマス』だが、じつは、もっとも早く大きな人気を博した地域は日本とされている。つまり「ビッグ・イン・ジャパン」ソングなわけだが、ここにも、名曲の秘訣が隠れているかもしれない。

今月アップされた東京ドーム公演の映像。「『恋人たちのクリスマス』のベストパフォーマンス」と評価する声も
 

 ABC Newsラジオ娯楽部のチーフは、本作がホリデー・シーズンを支配した理由を「宗教性の無さ」だとしている。信仰心が表現される多くのクリスマス定番楽曲と異なり、このラブ・ソングで明るく表現されている憧れや欲求は、世界中の大勢が理解できるものだ。ユニバーサルなメッセージが主体だからこそ、立場や思想の違いを越えて愛されたというわけである。

 ご存知のとおり、日本の一般的なクリスマス・イベントは、宗教性が色濃いわけではない。もしかしたら、キリスト教に馴染みがないからこそ、「クリスマスの楽しさ」を突き詰めたマライアの贈り物にいち早く反応したのかもしれない。

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