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最も快適な角度は何度?

 そもそもリクライニングは人間工学の見地からみて、どうなのだろうか。

リクライニングシート着座時における快適性の評価
http://sahf.fc2web.com/thesis/2002orbefore/akiho.htm

 この論文によれば、最も快適だとされたのは男性では30度(地表からみて120度)、女性では20度(110度)であった。リクライニングした状態が、より快適なことは数値からも読みとれる。いいかえれば、全員がリクライニングすれば、全員が快適であるが、全員がリクライニングしなければ、全員が快適さを得られないということになる。

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 ただし、夜行バスの消灯時ならいざしらず、昼間の飛行機や新幹線では、ばりばり仕事をする人から、前日徹夜で少しでも仮眠をとりたい人まで、さまざまな背景をかかえた人が混在していることが問題を複雑にしている。

 また、リクライニングの論争は、一見倒す側と倒される側がイーブンのように感じるが、実は非対称である。

 倒す側には「より快適な移動空間」を手に入れるという物理的な側面が大きいのに対して、される側は、本来自分の領域である空間が浸食されることへの感情的な側面、あるいは公共の空間で譲り合うことを欠いたと考える倫理的な側面が重要になる。

 前席をリクライニングされても、自分自身のシートの座り心地には影響をあたえないからだ(大柄な人がテーブルを出して、ノートパソコンを使っていたら、リクライニングしてきてお腹につかえたといった特殊なケースはのぞく)。

リクライニング問題を回避する方法はあるのか?

 結局のところ、どこまでいっても神学論争が続くのがリクライニング問題なのだが、我々個人がある程度、問題を回避する方法はある。自分がリクライニングしたい場合は、最後尾の座席を確保することだ。それが不可能な場合でも、シートマップをみて、真後ろがアサインされていない席を選べば、現状埋まっている席よりは空席の可能性が高くなる。

 逆に前の人のリクライニングを回避したい場合には、一番前の席をアサインするか、現状前の席が空席となっている席をアサインすることで自衛するしかない。新幹線などの自由席ならば、空いているほかの席に移ってしまうという方法もある。

 夜行バスでも後ろに気をつかってリクライニングできない人がいることから、以前、福岡と鹿児島を結ぶバス「桜島号」の運転手が「一斉に倒しましょう」と車内アナウンスで告知したことが、ネットで話題となった。

 よいアイディアだと思うが、リクライニング一つとってもお上の号令がないとできないのが日本人の性なのだろうか……。

 みなさんはこのリクライニング問題、どう思われるだろうか?