12月22日、漫才日本一を決める大会「M-1グランプリ」が今年も決勝を迎える。

『文春オンライン』では、M-1グランプリ2019決勝に先駆けて『<緊急アンケート>過去14回で「一番印象深いM-1チャンピオンは誰?」』を実施。初代チャンピオンの中川家から、昨年優勝し一躍ブレイクした霜降り明星まで、老若男女から投票が集まった。(#1ですべてのアンケート結果を公開中)

昨年は霜降り明星が優勝を果たした ©時事通信社

 第1回大会のM-1グランプリ2001で準優勝し、現在はタレントのみならずお笑い講師として活動するユウキロックさんにこの結果について感想を聞いた。

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 ユウキロックさんは、ハリガネロックとして準優勝した第1回大会含め、2度ファイナリストとしてM-1の舞台に立った。最近ではM-1グランプリ予選の司会を担当しており、今年度も決勝当日には「ラジオでウラ実況!? M-1グランプリ2019」に出演する。

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 アンケートでサンドウィッチマンがぶっちぎりの1位。予想通りの結果ですね。大会初の敗者復活からの優勝ですから、視聴者の皆さんの記憶にも鮮明に残っていたんだと想像します。

 芸人目線で言うと、僕もファイナリストだったからわかるんですが、決勝進出が決まって当日までの2、3週間。あの期間が一番チヤホヤされるんですよ。「俺は今、漫才師のど真ん中を歩いている」。主人公感が半端ないんです。それがサンドウィッチマンには一切ないんです。1日です。たった1日で人生の全てが変わった。こんな芸人はサンドウィッチマンしかいないんです。

第1回大会、ハリガネロックとして出場し準優勝したユウキロックさん

芸人すら感動した、サンドウィッチマンの優勝

 今年のM-1グランプリの敗者復活戦は皆さんご存知の通り、前年準優勝の和牛ら16組が決勝への1枠を巡って競います。しかし、サンドウィッチマンが出場した第7回大会(2007年)は57組も出場していた。その中から決勝参加の1枠を獲得するのは確率から見ても難しい。それに、サンドウィッチマンは3年連続で敗者復活戦に出場している。決勝未経験者で敗者復活戦の回数が増えれば増えるほど、その環境に慣れきっちゃうんですよ。真剣にネタはしていますよ。けど、慣れきって悔しさが薄くなるんです。

 当時2人は同居していたと聞きます。一緒に家を出て、会場の大井競馬場について、「寒いなー」と言いながらタバコを吸う。あの現場の空気を知っているので、俺にはそんな絵が浮かびます(サンドウィッチマン、そうじゃなかったらごめんね……)。だって「敗者復活戦から優勝」という前例がまだないときですから。優勝できるなんて誰も思ってないですよ。

 それが、そのたった1枠を獲得して、大井競馬場から急いでテレビ朝日本社の決勝会場に向かってネタを披露して見事に優勝。あっという間に時の人になった。1日どころか、数時間で「人生が変わった瞬間」を視聴者全員が目撃したわけです。

サンドウィッチマン ©共同通信社

 M-1グランプリで優勝すると芸人としてブレイクするという認識が広くあると思います。とは言え、その他の歴代チャンピオンを見ると、大会前から少しずつ知名度を獲得していた芸人が優勝を機に本格的に活躍の場を広げていくパターンでした。

 僕はサンドウィッチマンのことを当時から知っていましたけど、世間にはまだそれほど認知されていない状況でした。審査員ですら知らない人もいたんじゃないでしょうか。その時のファイナリストには、キングコングやトータルテンボス、笑い飯といった知名度のある優勝候補がたくさんいたのに、すべてを下してサンドウィッチマンが優勝するシナリオは感動的でしたよ。