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嵐の奉祝曲を吹き飛ばした「万歳45唱」

 それ以外では、民間団体が主催した「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」も言及しないわけにはいかない。式典の最後、「万歳!」をしつこく連呼するマイクパフォーマンス(万歳45唱)は、嵐の奉祝曲を吹き飛ばすほどのアクの強さを誇った。

11月9日、「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」 ©︎JMPA

 ちなみに、あいちトリエンナーレに出典された、大浦信行の映像作品「遠近を抱えてPartII」が「昭和天皇の写真を燃やしている」として「天皇ヘイト」と批判されたのも、今年のことである(なお蛇足ながら、「ヘイトスピーチ対策法」では、ヘイトスピーチは「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」と定義づけられていることを付記しておく)。

大喜利でポップに使われた「平成最後の」

 ただ、天皇関係で今年の言葉をひとつ選ぶとすれば、筆者は「平成最後の」を強く推したい。

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「平成最後の夏」「平成最後の秋」「平成最後の冬」……。改元を前に、雨後の筍のようにこうした文句が溢れかえったことは忘れられない。

 この言葉のポイントは、「国体」「奉祝」「万世一系」などと異なり、たいへん使いやすくポップなことだった。そのため、「平成最後の旅行」など商品サービス関係に限らず、「平成最後の飲酒」「平成最後の散財」などSNS上の大喜利(言葉遊び)でも気軽に使われた。

©iStock.com

 イー・ガーディアンが調査した「SNS流行語大賞」によれば、今年1月1日から11月23日の間、ツイッターでもっとも多くつぶやかれたのも「平成最後の」だったという(「『SNS流行語大賞2019』発表 19年にTwitter上で最も多くつぶやかれたフレーズとは?」)。

 たしかに、「平成最後の」は何気ない言葉遊びにすぎない。ただ、それだけに天皇制(ここでは皇室制度と同義)を自然に浸透させる効果は抜群だった。この言葉を遊び感覚で使ううちに、これまで天皇に関心がなかったひとも、知らず識らず「ここで時代が切り替わる」「日本は天皇と切り離せない」となんとなく意識するようになるからである。

宮内庁提供

「太平洋戦争で日本と戦った国は?」「いまの財務大臣は?」と訊かれて答えられないひとでも、今年改元したことは知っているだろう。その波及効果は侮れない。