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北斎晩年の肉筆画
若き日には浮世絵版画を多く手がけたが、晩年には肉筆画が多くなった。よって北斎館は、北斎の肉筆画コレクションでは随一の存在となっている。北斎最晩年の最盛期に描かれた名品の数々が、現在は生地たる墨田区に運ばれてきているというわけだ。
展示室で圧倒的に目を惹くのは、《東町祭屋台天井絵 鳳凰》と《上町祭屋台天井絵 男浪》だ。北斎は小布施で地元の依頼に応じ、祭屋台の天井絵を描いた。これが具象と抽象の融合された、デザイン性の高い作品に仕上がっている。まさに北斎芸術の到達点と言っていい。
他にも、北斎が毎日描いていたという獅子の絵《日新除魔》や、センス溢れる色合いの《柳下傘持美人》など、筆使いから北斎の息吹が感じられる作品もあって見惚れてしまう。
老いてなお盛んであることは可能だ。北斎の絵は、そう語りかけてくれているかのよう。会場で作品に囲まれていると、北斎にぜひあやかりたい、いつまでも現役のまま長生きしたいとの気力が湧いてくるのであった。