1ページ目から読む
2/3ページ目

「松本さんのアイデアを具体的な形にする」方法

――『ドキュメンタル』における総合演出の役割はどんなものなんですか?

小松 これは松本さんと僕がご一緒させていただく時の基本的なスタンスなんですけど、簡単に言うと「松本さんのアイデアを具体的な形にする」という役割です。たぶん、松本さんにとって僕は、考えが具現化される過程でのストレスが比較的少ないほうなんだと思います。それで僕に声がかかるんだと思うんですよね。「ごっつええ感じ」以来、長らく一緒にやってますし、僕はあの人とやる時は、完全に彼のアシスタントだと思ってます。例えば、1つの置物をどっち向きに置くかということも、「きっと松本さんはこう考えているだろう」と、勝手に分かっているつもりなので。

©三宅史郎/文藝春秋

――松本さんから具体的な指示があるわけではないんですね。

ADVERTISEMENT

小松 松本さんは「こういうことがやりたい」って言います。それをどういうふうに番組にしていくのかが演出の仕事になってきます。『ドキュメンタル』で言えば、招待状があって、それが出場者候補に届けられて、という筋立てとかはこっちで作るんです。それで、その時の表情を撮る。これはドキュメンタリーだから、こういうふうに構築していこうっていうのは全部任せてくれます。部屋のデザインや照明の雰囲気とかも決めていく。基本的な設計、番組の筋立て、収録のコンディションとかを僕らでどんどん作っちゃいます。それで、僕らは松本さんと一緒にモニターを見る。あれ、大変なんですよ、見るのが。37台のカメラが回ってるんで。

――37台ですか! 格闘技の煽り的な演出もありましたね。

小松 (佐藤)大輔(※『PRIDE』などで「煽りVTR」などの演出を務めた演出家)にやってもらったんです。大輔とは『BAZOOKA!!!』(BSスカパー!)とかで前から一緒にやってるんですけど、松本さんはどこかお笑いを格闘技だと思っているところがあると思うんです。松本さんが、基本的には実験ドキュメンタリーっていう考え方で作ってるので、そこに臨む彼らに問われているものは何か、みたいなことをやっていくと、これには格闘技的な描き方がハマるだろうと。そこのショーアップということでいうと、やっぱり大輔がいいんじゃないかなと思ったんです。

©三宅史郎/文藝春秋

「笑いをこらえてる顔が面白そうなやつ」が『ドキュメンタル』芸人

――キャスティングはどのような基準で?

小松 キャスティングは、みんなでアイデア出し合ってという感じですけども、松本さんが言っていたポイントは、「笑いをこらえてる顔が面白そうなやつ」。そこが笑いどころだっていうのは松本さんには最初から見えてるんです。あとは、ショーマンとして徹することができる人。この企画の芯は、優勝すれば1000万円というお金の部分もありながら、一方でカメラで撮られている芸人である自分もいるわけですよね。つまらない人に見せたくない。でも、お金も欲しい。その板挟みになる。さらに言うと、自分が笑かして勝つっていうのが一番理想。笑いはやっぱり空気を作っていかないと起こらない。そこを構築していきつつ、その波に乗るということ=笑ってしまうというリスクに乗っていくという緊張感が出せる芸人ですね。

――芸人としてのプライドと人間としての欲望がうまく表に出やすい人がキャスティングされた感じがします。

小松 そうですね。当然お声がけはいっぱいしてますけど、出てこない人もいたわけですから。