令和元年の日本列島も、相次ぐ災害に見舞われた。とりわけ、秋口に来襲した台風15号と台風19号。立て続けにやってきたふたつの台風は、東日本を中心に大きな被害を残した。そうした中で、人命救助や物資輸送などで活躍し、災害からの復旧を後押ししたのが自衛隊。多岐にわたる自衛隊の災害派遣による活動の中で、“空から”の支援に携わった隊員の話を聞いた。取材に応じてくれたのは、陸上自衛隊第1師団第1飛行隊の航空操縦士・吉田達雄さん。台風15号・19号ではどのような活動をしたのか、そして陸上自衛隊の“ヘリ部隊”の役割とはなにか――。

(全2回の1回目/#2へ続く

陸上自衛隊第1師団第1飛行隊の航空操縦士・吉田達雄さん
陸上自衛隊立川駐屯地に本拠地を置く第1師団第1飛行隊

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「台風19号では奥多摩に救援物資を運びました」

「今回の台風15号と19号では、第1飛行隊として航空偵察や物資輸送を実施しました。当初は人命救助も計画にあったのですが、途中で水位が下がってきたので、第1飛行隊では実施することはなかったです。航空偵察は、文字通り空中から被害状況を偵察して情報を収集する任務。目視はもちろんですが、写真や映像も撮影して情報資料を集め、必要な物資や派遣する隊員の数などを決める情報として扱ってもらいます。地上からの情報だけだとどうしても内容が限られてしまいますので。

 物資輸送は水や食料、燃料などを孤立した被災者に届ける任務です。水没したり土砂崩れなどで道路が通れなくなった場所には車両で物資を運ぶことができないので、我々が空から救援物資を運ぶことになります」

10月に上陸した台風19号。被害の大きかった奥多摩地区へ救援物資を空輸する第1師団第1飛行隊のヘリ ©陸上自衛隊

「台風15号では成田方面、19号では埼玉や神奈川、山梨まで偵察で飛びました。物資輸送では奥多摩方面にも運びました。灯油・ガソリン・軽油といった燃料と、食料だとカレーやおでんなどのレトルトパック。ヘリ1機におよそ500~600kg積むことができ、2機で4往復。着陸できない場所だったので、空中でホバリングしてホイスト装置を使ってロープで物資を降ろしました」