災害現場で「着陸するか、ホバリングするか」
第1師団第1飛行隊が保有しているヘリコプターは米国ベル・エアクラフト社のUH-1J。安全に着地するためには少なくとも30m×30mほどの空き地が必要だという。ただ、孤立した山間部の被災地などにはそうした空き地がないケースも多い。
「事前に地上の連絡員が現地に足を運び、ヘリが着陸できる場所の情報を提供してくれるんです。ただ、航空の専門家ではないので、最終的に着陸するかどうかは我々操縦士が現場で判断することになります。災害では現場に飛来物も飛んできていることが多いので、これまでの経験も含めて降りるかどうかを決めます。もちろん着陸して物資を降ろすほうが確実で安全なのですが、ギリギリのスペースに無理をして着陸するよりは空中から降ろしたほうが良いのです。
空中から物資を降ろす時には、先に隊員をロープで地上に降ろし、あとから物資を受け取る流れになります。操縦士は機長と副操縦士の2名乗っていますが、加えて後ろに整備の隊員が4名。普段は第1飛行隊の整備班の隊員としてヘリの整備をしているのですが、ホイスト装置で降下する訓練も受けており、物資輸送だけでなく人命救助でも力を発揮してくれています」
常に操縦士4名が出動に備える
吉田さんの所属する第1師団第1飛行隊は、立川駐屯地に本拠地を置く。所属隊員は全体で約75名おり、吉田さんら操縦士たちによる飛行班のほかに整備班・通信班、そして隊全体を統括する隊本部から構成されている。操縦士の資格を持つ隊員は20名ほどいるそうだが、現在、実際に飛行班で操縦しているのは8名だ。
「先ほど言いましたが操縦士は1機2名で乗ります。平常時はヘリ2機が待機しているので4名が出動に備えていることになる。全体の半数ですね。それが交代で任務に就いて、いつでも飛べるような準備を整えています。いつ何が起きてもいいように。ただ、台風19号では事前に大きな被害が出ることも予想されましたので、全ての隊員が出勤して備えていました。できるだけ早く現地に向かい、被災状況を確認することがその後の救援や復旧の第一歩になりますから。台風が過ぎ去った翌朝の日の出とともに出動しました」