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史上初の「二冠」ならず……かまいたちがM-1で放った“大仕掛け”と、それでも優勝できなかった理由

2人はコンテストのタブーに挑んだ

2019/12/27
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 一見同じようなものに思える漫才とコント。だが、プロの芸人に言わせると、それらは全くの別ものらしい。技術的にも求められる力が異なり、別の種目と考えた方がいいぐらいの違いがあるというのだ。

 漫才のベースは「会話」であり、芸人が本人として演じる。一方、コントは「芝居」であり、芸人が特定の役柄を演じる。漫才を専門にする芸人はしばしば「コントで自分以外の人間を演じるのが照れくさくて仕方がない」などと言い、コントを専門にする芸人は「役柄なしで素の自分としてどう話せばいいか分からないので、漫才の方が難しい」などと言う。

本気で「二冠」を目指していた“かまいたち”

 実際、漫才とコントを両方やる芸人は少ない。機会があればそこそこやるぐらいの人はいても、それぞれの分野で突出した結果を残している例はほとんどない。現時点では、漫才の大会『M-1グランプリ』とコントの大会『キングオブコント』の両方を制した芸人は存在していないのだ。

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かまいたちの山内健司(左)と濱家隆一(右) ©M-1グランプリ事務局

 そんななか、今年の『M-1』で前人未到の「二冠」を本気で目指していたのが、かまいたちだった。彼らは2017年に『キングオブコント』で優勝している。だが、その年は準優勝した「にゃんこスター」が一躍ブレイク。必ずしもかまいたちにスポットライトが当たったとは言いがたい結果に終わっていた。

 一方、かまいたちは『M-1』にもずっと挑み続け、今年で3年連続の決勝進出を果たしていた。『M-1』には「結成15年以内」という芸歴制限があるため、彼らにとっては今年が最後の挑戦になった。

サンドウィッチマンとの違いとは?

 かまいたちが非凡な才能の持ち主である証拠として、漫才ではコントと全く別のスタイルを用いている点が挙げられる。

 例えば、サンドウィッチマンも漫才とコントを両方こなす芸人として知られているが、彼らの漫才は会話の途中でそれぞれが役柄に入るコント形式の漫才(通称「漫才コント」または「コント漫才」)である。コントを専門にする芸人が漫才を演じるときには、この形式が一般的だ(ちなみにサンドウィッチマンは2007年の『M-1』で優勝しているが、2009年の『キングオブコント』では準優勝に終わり、やはり「二冠」を逃している)。

サンドウィッチマン ©時事通信社

 だが、かまいたちはコントに入らない純粋な「しゃべくり漫才」を演じている。しゃべくり漫才では素の話芸のクオリティが問われるため、これで『M-1』に挑戦し、3度も決勝に進んでいるというのは、本当に驚異的なことだ。

 かまいたちはもともとネタの面白さに定評があるコンビだった。個性の強いキャラクターを演じるコントや、1つの設定で押し切るコントなど、上質なネタを幅広く持っていた。山内健司、濱家隆一が2人とも器用であるため、ネタによってボケとツッコミを入れ替えられるというのも強みだった。