永田町や霞ヶ関のあちこちで政界の情報に耳をそばだて、問題点に切り込む日刊スポーツの名物政治コラム「政界地獄耳」。時事芸人・プチ鹿島が「地獄耳師匠」と敬愛してやまない執筆者(K)とは一体何者なのか? 今回は、立場や顔を明かさないことを条件に対談が実現。表面だけではわからない、政界の裏の裏をスポーツ紙でとことん書き続ける意味を聞いた(全2回の1回目/後編に続く)。
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“永田町読者率”の高さ
鹿島 日刊スポーツのコラム「政界地獄耳」は与党だけじゃなくて野党にも厳しいし、永田町のディープなネタだけじゃなくて、ツイッターなどのネットの話題も放り込んできますよね。僕は新聞読み比べの原稿で敬意を込めて、「地獄耳師匠」と書かせてもらってます。「政界地獄耳」のコラムが出るたびに、永田町界隈でものすごく話題になっているという噂を耳にしたんですが、それは本当ですか?
地獄耳 私も知らなかったんです。スポーツ新聞ですから日本中に配られているんですけど、最初に「あれ?」と思ったきっかけは、朝のラジオ番組で紹介され始めたことですかね。一般紙にも書いていないことや、いささか踏み込んで書いた内容について、だんだん朝も昼も取り上げられるようになって、「また、地獄耳が読まれてたぞ」という話を人づてに聞くようになりました。そのうち、“永田町読者率”が高いことが分かってきたんです。
鹿島 永田町読者率! どんなリアクションがあるんですか。
地獄耳 まず誰が書いているのか分からないので、中身よりも「こいつは誰だ」と。
鹿島 コラム末尾の(K)という署名しか手がかりがないから、変な話、犯人探しみたいなことが始まるわけですね。
地獄耳 永田町はまずそういうところから入るものですから。それから、国会内にある国会対策委員会(国対)の部屋では、その日の政治記事を閲覧できるよう、徹底的に切り抜かれていて、「政界地獄耳」を国対でむさぼり読む人もいるらしいんですよ。
鹿島 すごいですね。そういえば週刊誌にスキャンダルが出たりすると、その記事のコピーを読むまぬけな姿を後ろから撮られてる国会議員が時々います。
地獄耳 よくあるでしょ。だいたいどの党でも国対に行けば記事が読めて、各社の記事を読みやすく綴じてあるようです。
鹿島 そういうのは、捨てないでちゃんと保存してあるわけですね(笑)。
地獄耳 まずい資料は1週間以内に急いでシュレッダーにかけて捨てると。まあそういう訳で、「政界地獄耳」は何人で書いているか分からないとか、年齢不詳だとか、今でもいろんな噂がたくさんあるようです。
鹿島 いいですね、気になる覆面レスラーみたいです。永田町じゃなくて、一般の読者から反響は来てますか?
地獄耳 私のところへ直接には来ないんですが、新聞社には電話で応援コメントをいただいたり、「もっと正論をやってくれ」というご意見もあるようですよ。あとは当事者の人たちからの文句とかね(笑)。
覆面はたまにもげそうになるんだけど、何とかまだ取られていないという感じで……。とはいえ、もう十数年続けているので、本気で探している人もいないみたいだということも分かってきました。