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「書いてるのは誰だ?」 日刊スポーツ「政界地獄耳」の“永田町読者率”が高い理由

プチ鹿島×地獄耳師匠 #1

note

コラムは雨の日も風の日も、台風の日も、新聞休刊日にも

鹿島 そもそも、地獄耳師匠はいつからこのコラムを書いているんですか?

地獄耳 第一次安倍政権発足後くらいですかね。

鹿島 ある意味、安倍政権とともに地獄耳師匠はあるわけですね。

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地獄耳 そうなんです、これはポイント。それから実は、「政界地獄耳」のコラム自体は1990年10月から続いています。初代からたすきをつなぎながら、そろそろ30周年という長寿コーナーなんです。

鹿島 じゃあ(K)さんが書き始めた当時、そのことは読者にあまり伝わらずに……。

 

地獄耳 だって匿名ですから、告知がないんですよ。何事もないように変わりました。そのうちに、「何か変わった?」みたいなことを言われ始めて。

鹿島 じわじわ伝わっていったと。それぞれの書き手によって、少しずつ芸風も変わってきそうですもんね。すごいなと思うのは「政界地獄耳」って、長谷川町子さんの4コマ漫画ぐらいの勢いで、ほとんど毎日載ってますよね? 今ではウェブ版にも掲載されていますし。

地獄耳 これ、本当に大変なんですよ。厳しい新聞社でして、日曜以外は雨の日も風の日も、台風の日も、新聞休刊日にも書かされるんです(涙)。

鹿島 僕、そういう日はコンビニとかキオスクで買ってます。新聞ってだいたい朝、読むじゃないですか。あの朝読む時にちょうどいいあんばいの情報というか、「あ、これについて読みたかったんだよ」というテーマで書かれていることが多くて。

地獄耳 ありがとうございます。もちろん明日の朝の雰囲気がどうなっているかな、ということも考えますし、タイムリーなネタを入れたいから、どうしても書きだめができないんですよ。

鹿島 となると、年末年始もお休みどころではないですか?

地獄耳 元旦は書かないですが、大晦日は書いてますね。通常は700字から800字(400字詰め原稿用紙2枚程度)くらいで、スペシャルなんかの時は1200字以上。まずネタを何にするか悶々として、最後の5行でまた迷うんですよね。

意識高めの人が「政界地獄耳」をSNSでシェア

鹿島 現象として見ていて面白いのが、スポーツ新聞を買わないような感じの人が、「政界地獄耳」の内容をSNSで意識高めにシェアしたりツイートしたりしてるんですよね。そういうの見かけると、ほら、スポーツ新聞て面白いでしょ? ってニヤニヤしちゃいます。

 コラムでは、まだ新聞には反映されていないようなネットで議論になっていることやSNSの動向もこまめに注目して、取り上げていますよね。情報収集の秘訣はありますか。

地獄耳 情報収集というか、先ほど言ったような“永田町読者率”の高さが分かってきた時に、彼らが持っていないものはネットの情報だと直感したんです。

鹿島 なるほど。最近では、毎日新聞や東京新聞がネットで議論や話題になっていることを取り上げていますけど、僕が見ている限りでは、地獄耳師匠のほうがそのことに気付いたのは早かったんじゃないかと。

 

地獄耳 玉石混交ではあるけれども、いわゆる大手マスコミよりも2歩3歩進んだことが書いてあったり、もっと言うと、ネット民の調査能力のすごさには脱帽することがあって。ただ単に「ネットにはこんな話がある」では、怪しい情報でも何でも紙に載せてしまうことになるので、そう簡単にはいきません。つまり、ネット世論というのが一般の世論とは別のところにあることを、永田町の読者に伝えたいと思ったんですね。