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大物議員からの電話 とっさに答えた“一言”

地獄耳 ケースバイケースですね。私の正体を知ってか知らずか、ある大物議員に「あることないこと書きやがって」と直接電話で怒られたことがあります。

鹿島 ああ、直接……。何て言ったんですか?

地獄耳 つい「ああ、あの人は結構いい人ですよ」って言っちゃいました。

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鹿島 それは煙に巻かれますね!

 

地獄耳 「ちょっと言っておきますよ」と、とぼけ続けました。

鹿島 いい話です。スポーツ紙の政治コラムや社会面って、実は何でもできるし、深いなと思うんですよ。ネットと一般朝刊紙の真ん中くらい、絶妙な立ち位置なんですよね。

地獄耳 そう言っていただけて、有り難いです。W杯やオリンピックで、スポーツと政治がものすごく近くなってしまった今だからこそ、スポーツ紙で政治コラムをやる意味があるのかなと。日刊スポーツも柔軟なところがあって、東京五輪のマラソン札幌開催案が出てきた時は、「政界地獄耳」が二面あたりに載ってました。

鹿島 読みました。大きいネタの時は、本紙の記事と一緒に、地獄耳師匠のコラムがドーンと社説のように載りますよね。本紙の社会面との連携プレーを見るのも、新聞読み比べをする楽しみの一つです。

地獄耳 事前に打ち合わせる時もあれば、黙ってやってうまくいくこともあります。コラボできる時は、事実関係をあまりだらだら書かなくても、社会面できっちり説明してくれていて、助かるんですよ。

 今、オリンピックを目前にして、アマチュアスポーツ界の問題が目立っていますよね。テコンドーもボクシングも、もともとは性善説、お金がない中で組織を作って、競技を盛り上げようとしていたはずなんですが、それがだんだん形骸化して、いつの間にか選手や世間から見れば「なんだこりゃ」みたいな人たちが牛耳っていた。こういう時は、政治が手をつっこまないと動かせないこともたくさんあるんです。そう考えれば、スポーツ新聞と政治の記事は、もしかしたらやっといい関係になるのかもしれません。昔は疑獄や事件と政治が近かったけど、今はそういうものだけじゃなくなっちゃった。

鹿島 確かにそうですよね。立ち位置の話に戻ると、一般紙が書きにくいところをスポーツ紙やタブロイド紙、週刊誌が取り上げることが増えたので、ちょっと持ち上げられる風潮もありますよね。でも僕が読んでいて思うのは、実は中の人は「俺たちはベンチのヤジ将軍なのに、4番を打たされるのはおかしい」と内心思っているんじゃないかと。そのあたりはどうですか?

 

地獄耳 そうなんです。本来は、朝日や毎日が書けばいいだろうという話ではあるんです。

鹿島 スポーツ紙には、ゲリラ的な面白さがあるじゃないですか。それを読む方が「待ってました」とか言うのは、なんか違うでしょって思います。

地獄耳 そういえば、朝日新聞の政治部OB会は毎回ものすごく荒れるそうですよ。「なんだこの紙面は!」と、上の世代になればなるほど怒り狂う。

鹿島 「何やってるんだ、お前ら!」って、巨人のOB会みたいな感じでしょうか。

地獄耳 アハハ。私も、一般紙に負けたくない思いはもちろんあって、まだ何が起こっているかはっきりとは分からないうちに、ちょっと早く書きすぎることがあるんです。担当デスクからも「早すぎます」と怒られる(笑)。

鹿島 時代が追いつけない。そのことを頭に入れておくと、一つの醍醐味というか「政界地獄耳」の新しい読み方ができますよね。「今日はちょっと早いぞ」と。

地獄耳 まあ、そうですね(笑)。毎日読んでいないと分からないですよ、というマニアックな人向けの楽しみ方かもしれませんが。

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【後編】「桜を見る会」「身の丈」「上級国民」……“選民意識”で見る2019年の日本と政治 に続く)
※この対談の『日刊スポーツ編』は、日刊スポーツのお正月紙面で掲載予定です。

 

写真=末永裕樹/文藝春秋