『ドラゴンボール』や『ワンピース』は、体にしみついています
――『とんかつDJアゲ太郎』は、カルチャー好きの大人だけでなく、子供にも人気の作品です。最初から子供への意識はあったんでしょうか。
イ:子供や少年にこそ、という思いはありました。
小山:子供はすごく意識しています。少年にこそ読んでほしくて描いていました。自分が子供のときにこういうマンガがあったらいいな、という視点を失わないことを心がけています。それにジャンプだけというか、ほかの青年誌などは読んでこなかったんです。もう刷り込まれてるんでしょうね、ジャンプが。
――特にお好きな作品、漫画家さんなどはいらっしゃいますか。
小山:すごくベタなんですけれど、『ドラゴンボール』です。それと『ワンピース』。でも小学生の時に、当時連載してたマンガの単行本を全巻持ってた時期があったので、むしろジャンプの全漫画に影響受けてるというのが正しいのかもしれません。とはいえ、やっぱり鳥山明先生、尾田栄一郎先生はスーパーリスペクトですね。『ドラゴンボール』や『ワンピース』は影響とかのレベルでなく、もう体にしみついていると思います。
――イーピャオ先生はどうですか。
イ:実はマンガはあまり読んでいないんです。映画もよく見るのですが、それもピンポイントだけで、網羅して語れるようなものではありません。でも傾向としては、ご近所モノ、街モノみたいな感じはすごく好きですね。『喜劇 とんかつ一代』であったりとか、マンガなら『こち亀』とか。登場人物が決まっていて、同じエリア内でドタバタが起きていくものは昔からすごく好きでした。ほかには、宮藤官九郎さんの作るドラマも同じコミュニティ内でのコメディみたいなところがありますよね。『ごめんね青春!』、『あまちゃん』もそうですし。
小山:あと自分が描く直前に『あまちゃん』にすごくはまっていて、そのアウトプットがアゲ太郎みたいなところはありましたね。
――さきほど小山先生から、ヒップホップが好きだという話がありましたが。
小山:ヒップホップも含めて音楽は好きなんですけれど、めちゃくちゃマニアというわけではありません。でもこの作品を描き始めてからいろいろな音楽に詳しくなりました。ほんとうはヒップホップをもっと描きたかったんですけれど、それだけにするとキャラクターが固まり過ぎちゃうんです。クラブカルチャー全体を描きたい思いが強かったので、いろんな音楽を入れることは意識しました。
ヒレカツをロースかつのどことトレードするか問題
――いろんな音楽があるように、とんかつの食べ方にもいろいろ流儀がありますよね。とんかつはどこから食べ始めますか。
イ:すごい質問ですね(笑)。まず前提として、山になっている部分、いちばん頂点の部分がおいしいわけじゃないですか。そこをどのタイミングで食べるのか、ということを中心にいろいろ組み立て方があると思います。たぶんいちばん多数派だと思うんですけれど、ぼくは左端からです。それと、ひとりがロース、ひとりがヒレを頼んだときに、どのピースを交換しようかっていう問題もありますよね。これはぼくは左から二番目派。
小山:あ、おれ右側だ。
イ:右だと脂が固まっているから、やっぱりバランスのいいところをあげるのがいいんじゃないのかな。
小山:良かれと思ってやっていたんだけれど(笑)。
イ:山の一番盛り上がっているところは自分で食べたいし、端っこはさすがにかわいそうだから、端から二番目の脂と肉のバランスがいいところをあげることにしています。
――そういう細かいところまで作者が気にしているのが伝わってきて、とんかつ好きとしてはうれしいマンガでした。
小山:よかった、ほんとうによかったです。
イ:報われたね。
写真=杉山拓也/文藝春秋