近年のとんかつ界における最大のトピックと言えば、なんといっても『とんかつDJアゲ太郎』でしょう。渋谷のとんかつ屋の3代目である勝又揚太郎がクラブミュージックと出会ってDJに目覚める、という大人気ウェブコミックです。今年の3月に約2年半にわたる『少年ジャンプ+』での連載が完結し、単行本も5月2日に10巻目が出て、さらに次の11巻が最終巻となる予定になっています。
そこでジャンプ編集部にお邪魔して、作者のおふたり、漫画担当の小山ゆうじろう先生と原案担当のイーピャオ先生にお話を伺ってきました。
おふたりのガッツリとんかつ語りを、どうぞご賞味ください!
ヒップホップ×森繁久彌で生まれた物語
――本日はどうぞよろしくお願いします。まず『とんかつDJアゲ太郎』という作品は、どういうアイデアで始まったんでしょうか。
小山ゆうじろう先生(以下、小山):この作品より以前にジャンプのギャグマンガの賞にひっかかったことで、本格的にマンガ家でやっていく決心をしていました。その後、自分の好きなヒップホップのマンガを描こうとしていたのですが、一旦頓挫してネタに困っていたんです。そのときに、イーピャオと飲みながら話してたネタが活かせそうだな、と思ってそれを編集部に持っていったら、あれよあれよという間に初連載が決まった形ですね。
イーピャオ先生(以下、イ):このマンガの大きな要素に渋谷という街があります。ぼくは平日は会社員として渋谷に行くことが多かったのですが、そのときから渋谷はネタになるんじゃないか、というアイデアはありました。
小山:渋谷を舞台にすることを思いついてから、ふたりでまず渋谷っぽい若者おしゃれ3大職業を挙げたんです。スタイリスト、ショップ店員、それとDJですね。主人公をどれにしようかと考えたときに、ヒップホップ漫画構想の経緯もあり、DJはアリじゃないかな、と。
イ:それと、ちょうどそのころに『喜劇 とんかつ一代』(1963年、主演:森繁久彌)という、とんかつ屋主人を中心にしたドタバタ人情喜劇をふたりで見に行く機会がありました。それでこの映画に倣って、すでにあったアイデアを「とんかつをキーアイテムとした都市型群像劇」として組み立てていったらおもしろいんじゃないか、と話し合ったんです。
小山:ここで「とんかつ」「DJ」「渋谷」という要素が出揃って、『とんかつDJアゲ太郎』ができあがったわけです。
――なるほど。おふたりはどういうきっかけで出会われたのでしょうか。
小山:出会いは大学のころです。持ち上がりの学校だったので中高も一緒なんですけれど、そのときはまだ出会っていませんでした。
イ:一緒と言っても、ぼくの方がひとつ年上ですね。
小山:でもイーピャオは中高時代からおもしろい人だということで目立っていて、一方的に知ってはいたんです。
イ:そのころは演劇をやっていました。人前に出るのがすごく好きなので、今日の取材も顔出しNGなのはほんとは残念なんですよ。