文春オンラインで実施した「次期首相になって欲しいのは誰?」アンケートで、4月の調査から人気が急落した小泉進次郎環境相。その要因について、ノンフィクションライターの常井健一氏に聞いた。(#1で「ポスト安倍」アンケート結果を公開中)

 常井氏は「政治家・小泉進次郎の10年」を取材してきた。大型国政選挙のたびに全国を行脚する進次郎氏の背中を追い掛け、地方視察の密着も試みている。また父・純一郎氏と編んだ著作も出版している。

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ロイターの調査でも期待が「大幅に後退」

――なぜ小泉進次郎氏の人気はここまで急落したのでしょうか。

 かつて小泉さんは、世論調査の結果について問われると「あれは知名度調査だから」とそっけなく答えてきました。人気や期待が右肩上がりだった時期は、こういう説明で納得できましたし、「謙虚さ」を演出することができましたが、こうも半減以上すると、しかも他の方々と比べてもこれほど異常な下げ幅を見せると、「知名度」があるのになぜ下がったのか。これまでのロジックは成り立ちません。

 これは「文春オンライン」の異常値ではありません。ロイター通信による12月企業調査では、同じようなトレンド、飛び抜けた下げ幅を示しています。

「今年7月調査では、次期首相に望ましい人物として安倍氏と回答した企業は37%を占め、(中略)小泉氏も21%と期待を集めていた。しかし、今月(12月)の調査では安倍氏16%、小泉氏11%とそれぞれ大幅に後退」(ロイターより)

https://graphics.reuters.com/JAPAN-COMPANIES-SURVEY-LJA/0100B33G2BK/survey-pm.png?fbclid=IwAR0kf0aKvRg_4ZN0tHmejd3Ny576U48rS576rB55Dm4biWvvtWer_zAeXRk

8月に「デキ婚」発表、9月に初入閣した小泉進次郎環境 ©文藝春秋

「築城十年、落城一日」

<築城十年、落城一日。令和元年の小泉進次郎を一言で表現するのに、これほどふさわしい言葉はない。>

 文春ムック「2020年の論点100」に寄稿した拙文「滝クリと結婚、大臣就任 小泉進次郎は総理の座に近づいたのか」は、このような書き出しで始まります。その上で、「人心が離れるのは時間の問題だ」と予測しました。 

 文中では「彼はまだ経世済民を説く器ではない」とも指摘しています。単なる人気投票ではなく、いざ、真剣に暮らしを考え、経済や福祉を誰に信頼して託せるか見極めると、圧倒的多数の企業人が「彼には国のかじ取りを任せられない」という判断を下している証拠です。

 大企業のエリートならまだしも、厳しい自然と葛藤しながら地べたで暮らす第一次産業従事者、来る日も来る日も1円、10円を計算しながら商売している中小企業経営者やその社員、つまり地域の自民党を支えてきた人々から見れば、彼の語る「暮らし」、「子育て」、「家族」、「働き方」にリアリティを感じないでしょう。これは、総理候補である以前に、政治家として致命的な評価です。

 今年で初当選から10年。1年生議員の頃からこれほどテレビに寵愛され、立派なベテランジャーナリストたちが甘やかし、党内外に敵を持たない人気政治家はいません。ところが、類まれなる発信力がありながら、目立った実績が何もない。次々と派手な政策を打ち出しますが、人気政治家として10年間も注目されてきたのに、最後まで仕上げて国民の暮らしに大きな影響を与えた政策は何か思い浮かびますか。

 世には数多の作家や編集者が存在し、出版社も彼の一挙手一投足を報じながら、一冊として骨太のノンフィクションが出ていません。実は、私も10年も観察しながら、小泉さんを主人公にする本が成立したのは7年前の1冊目だけなのです。