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「物分かりは早い」環境省の官僚が期待する理由

 小泉さんも明らかに実力不足を自覚しているにもかかわらず、人前で強がりを見せるほど薄っぺらくなっていく。言葉の端々に「オレは特別な人間だ」という選民意識のようなものが出てしまっています。疑惑を指摘されても逃げ出し、グレタさんにも噛みつくなどどんどん空回りしていく。後見役として寵愛を受ける菅義偉さんの影響力低下も、彼にとっては誤算だったのではないでしょうか。果たして、就任3カ月で、就任当初の期待に応えられるような実績は出せていません。

 しかし、環境省の官僚たちは異様に期待の声を口にします。「頭はよくないけど、物分かりは早い」と。小泉純一郎政権を知る幹部級よりも、若手エリートに顕著です。したたかな出世株の官僚にとっては使い勝手の良い政治家に過ぎません。しかも、「新しさ」さえ演出できれば、飛びついてくる。「三流官庁」として霞が関のなかでも揶揄される彼らにとって、約20年前の小池百合子さん以来、他省を凌ぐ発信力が生かせる閣僚就任ですよ。

©文藝春秋

PR担当が変わり「言葉に力がなくなった」

 これまでも、後ろに控えるPR専門家が変わるたびに、まったく別人に変わるのが小泉さんの特徴でもありました。よく言えば、融通無碍、変幻自在、悪く言えば、政治の背骨となる思想や国家観がない。ですが、それでも数年前までは「自力」が生かされ、言葉に体温と体重が乗っていました。

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 28歳で初当選して以来、被災地や過疎地、離島など、普通の政治家が行かない場所を意識的に回ってきた。社会人経験ゼロの世襲4代目が、庶民に親近感を持たれたのは、こうした「土の香り」を漂わせる仕掛けと心掛けがあったからですよ。

 ところが、2017年あたりにPR担当が変わったのを機に、土の香りがデオドラントスプレーのような匂いに変わった。別の例えをするなら、ほどよい塩加減の地鶏のからあげだったのが、ブロイラーで作った添加物べったりのフライドチキンに変わったような味わいです。さらに、参院選ではイマドキのPRコンサルタントを外部から起用し、明らかに言葉に力がなくなった。政治を、地方を、有権者を、そして自民党員や支持者たちの感覚を知らない人びとが彼の言葉を操作してしまっている(文春オンライン7月の密着ルポを参照)。

 プライベートでも、名だたるIT長者ら、雲の上に住む人たちと並び、横文字の経営用語を唱える姿ばかり。極めつきが「人気女子アナ」とのセレブ婚でした。これでは国民の生活感覚と距離ができ、人心が離れるのは時間の問題です。

 民信なくば立たず。ケネディが大統領に就任した43歳を意識していた史上最年少での天下取りは、いったんは遠のいたと言えるでしょう。

「ポスト安倍」なぜ菅義偉も急失速したのか?

――アンケートでは菅義偉さんの急失速ももう一つのポイントでした。

 小泉さんの変節も、菅さんへの接近が大きく影響しているでしょう。