親子三代にわたる「天皇の理髪師」として、10年にわたり天皇、皇太子の御理髪掛(ごりはつがかり)を担当した大場隆吉氏は、日本でいちはやく頭皮ケアに注目した専門家の一人だ。
大場氏が代表を務めるOHBAの頭皮診断の実績は10万件を超え、頭皮のケアは薄毛予防だけでなく、美容や健康にも役立つとして、独自の「触れ方」と理論に基づいた頭皮ケアを提案している。大場氏に、自宅で取り入れられる頭皮ケアを聞いた。
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頭頂部の「筋膜」が薄毛予防のカギ
私たちの身体を覆っている膜、「筋膜」をご存知ですか。
「筋膜」は、私たちの筋肉や内臓、神経や血管を、ウェットスーツのように包んでいる繊維状の膜です。
いま、肩凝りの解消法として話題になっている「筋膜リリース」(筋膜にできた皺を伸ばすことで肩凝りを取る方法)という言葉で聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
実は頭皮にも「帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)」と呼ばれる筋膜があります。頭の上部には、「前頭筋」、「側頭筋」、「後頭筋」の3つの筋肉があり、頭部の血液を流す「ポンプ」の役割を果たしています。
しかし、頭のてっぺん付近は、帽状腱膜という筋膜で頭蓋骨がピターッと包まれています。ここには、血流を良くする「ポンプ」となる筋肉がなく、代わりに毛細血管が張り巡らされているため、血流が滞りやすいのです。
「サザエさん」の波平さんや、「鉄腕アトム」に登場するお茶の水博士を想像してみてください。髪が生えているところは、筋肉の部分。逆に生えていないところは、帽状腱膜の部分ですね。つまり、血流が滞りやすくなるこの部分こそが、薄毛になりやすいのです。
「第二頭蓋骨」が出来ていませんか
健康な頭皮には、むくみが無く、適度な厚みと弾力、柔らかさがあります。
美容室やマッサージ店などで、「頭皮が硬いですね」と言われたことはありませんか。頭皮の硬さは、血液の流れが滞っていることや、老廃物が流れにくいことから起こります。
特に、後頭部の「後頭結節」(頭の後ろの一番出っ張っている部分)の血流が悪くなると、疲れが溜まりやすくなり、老廃物も溜まることで、髪の成長に必要な栄養が届きにくくなるため、薄毛の原因になるのです。
血流が悪くなった帽状腱膜は、頭蓋骨にピターッと頑固に張り付き、なかなか本来の頭皮の柔らかさに戻らなくなります。ここまで硬くなってしまうと要注意。帽状腱膜が「第二頭蓋骨」のようになって、老廃物が溜っているサインかもしれません。そのまま放置し、悪化させると、頭部が変形してしまいます。ですから、こうなる前に、日頃から頭皮を手で触れ、血液を流してあげましょう。