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官僚としてはかなり踏み込んだ“対米発言”

 北村氏は11月21日、東京でスティルウェル米国務次官補と会談した。スティルウェル氏の狙いはただ一つ、GSOMIA延長のため、日本側に善処を求めることだった。

 米国はしたたかだから、圧力と受け止められるような発言はしない。スティルウェル氏は「日韓GSOMIAの延長を望んでいる」と語ると同時に、「韓国はGSOMIA延長と輸出措置の問題を関連づけている」と指摘した。要は、「日本も輸出措置で多少譲歩してはどうか」という趣旨を婉曲に伝えたわけだ。

茂木敏充外務大臣 ©JMPA

 これに対し、北村氏は「確かにGSOMIAと輸出措置の問題は関係がある」と語ったという。この発言には日本政府の中枢にいる自信がにじみ出ていた。日本政府は従来、「輸出措置は国内問題」と位置づけ、GSOMIAと関連づけられることを警戒していたからだ。北村氏の発言は、官僚としてはかなり踏み込んだものだった。

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安倍首相のために功を焦ったか?

 ただ、北村氏は同時に、徴用工判決問題などを巡って韓国政府に不誠実な対応があるとして、強い懸念を繰り返し表明したという。詳しい発言内容は明らかになっていないが、北村氏の発言は、安倍晋三首相がこれまで繰り返し述べてきた発言をなぞるものだったという。

王岐山国家副主席(右)と会談する北村滋国家安全保障局長 ©共同通信社

 国家安全保障局長というよりも首相秘書官ではないかと見間違えるような光景を、北村氏にブリーフィングを行っている外務、防衛など関係省庁の関係者も体験している。各省庁担当者に対する北村氏の質問は「安保戦略上、どのような意味があるのか」というよりも、しばしば、「安倍首相にとってどういう利益になるのか」という点に集中しがちだからだ。

 取材から得たこうした証言は、もしかすると、北村氏を快く思わない人々による中傷である可能性もある。だが、12月6日、北村氏は北京で行った王岐山中国国家副主席との会談を巡る説明の中で、4月に習近平国家主席の訪日を目指す考えを明らかにしてしまった。