まずはスコップを握らせる
医師である中村さんは土木工事の素人だったが、独学を重ねて、ときには自らショベルカーを運転して工事の最前線に立つこともあったという。
澤地 とにかく、泥臭く、これが先生の働き方だったのです。
こうした中村さんの姿勢は、次代を担う若者たちにも受け継がれていった。
澤地 この頃から、中村先生の活動を知って現地で働きたいという日本の若者が増えていきました。ところが、彼らは、「世界の趨勢は……」と頭でっかちな議論ばかりしたがるそうです。先生は、彼らの話を「ウン、ウン」と聞きつつ、まずはスコップを握らせて肉体労働をさせる。すると、彼らも次第に泥にまみれて仕事をすることの尊さを理解するそうです。
2007年にはアフガニスタン国内で最大の水量を誇るクナール川から水を引く用水路の一次工事が完了した。水路が通って農作物が収穫できるようになると、何万人もの難民が現地に帰ってきた。澤地氏は中村さんの功績についてこう語る。
澤地 先生が亡くなっても、これまで取り組まれてきた事業は遺ります。先生が築いた用水路は、いまでは流域にすむ60万人以上の人々の生命を支え続けています。
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「文藝春秋」2月号および「文藝春秋 電子版」掲載の「中村哲さんがアフガンに遺した『道』」では、中村さんが現地に遺した功績だけでなく、これまでほとんど明かされることのなかった家族の支えについても詳述している。
中村哲さんがアフガニスタンに遺した「道」
【文藝春秋 目次】「消費税ゼロ」で日本は甦る<政策論文>山本太郎/<総力特集>2020年の「羅針盤」/わが友中曽根康弘 渡辺恒雄
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