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「南南問題」の再熱――北を巡る韓国“内部”対立

 いっぽう、南北関係では、韓国側に新たな“スキ”が生まれうる状況でもあります。

 北朝鮮との交流を巡って、韓国内での対立が再燃しうる。「南南問題(あるいは南南葛藤)」と言われてきたものです。南北問題ではなく、南南。南のなかで北朝鮮を巡って分裂が起きる、という現象です。2012年頃から起きてきたものです。

 この先、文在寅大統領の対北接近に関して、過去の太陽政策時のような“カネのばらまき(支援にカネをつかって成果がないこと)”に関する論争や、北に対する低姿勢への非難が沸き上がった際、対北政策がかなり進めにくい状況になる。これらが、南南問題の火種でしょう。

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文政権の姿勢は「従北」か

 実際のところ、選挙運動時に、文在寅大統領の対北意識に対して多くの問題提起と論争が巻き起こりました。近年の韓国には「親北」を超えた、「従北(チョンブク)」という言葉があります。言葉通り、北朝鮮に強いシンパシーを感じるあまり、従ってしまうというものです。

 文在寅大統領も一部でこう言われてきたことは確かです。両親が北朝鮮の咸鏡南道咸興市の出身で、朝鮮戦争時に南に逃れてきた。文在寅大統領はその後、朝鮮戦争中の53年に 慶尚南道巨済郡(当時)で生まれています。就任直後、「平壌にでも出向く」と宣言したように、思いが強く出るのではないかと。ひとつの“懸案事項”にも見えます。

 確かに思いはあるでしょうが、彼が北に対して低姿勢に出すぎるとは考えにくい。

 過去にも韓国の有力な政治家には北朝鮮出身、あるいは北にルーツを持つ人物は多くいました。しかし時間が経つにつれて、当然のごとく少しずつ減っています。文在寅大統領とて、朝鮮戦争時は小さな子供に過ぎなかった。彼に関して、北朝鮮がルーツという点はそれほど重要なことではないでしょう。友好的、ということはあるかもしれませんが、従うというところまではいかないと見ています。

 いずれにせよ、今回の政権交代によって、南北関係、そして南北を含めた6カ国のバランスが変わる。すでに日本でもそう報じられているでしょうが、今後その兆候はより出てくる。そう見て間違いはないでしょう。