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【日本ハム】67年前にも1試合7本塁打 君は「東急フライヤーズ」を知っているか?

文春野球コラム ペナントレース2017

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今季二度目の「東急フライヤーズ以来」

 また「東急フライヤーズ以来」だ。ファイターズは4月の大型連敗記録(5連敗以上が2回、1949年以来68年ぶり)に続いて、5月12日、東京ドームにて「1試合7本塁打」(1950年以来67年ぶり)の球団タイ記録を達成した。以前も書いたが「東急」時代はさすがに僕も生まれていない。僕は上層階スタンドで合計7回、拳を突き上げ、仲間とハイタッチしたが、途中からびっくりしちゃって皆、顔を見合わせる感じになった。ちょっと不安になるくらいだった。記録上当たり前のことだが、ファイターズがこんなにじゃんじゃんホームランを打つのを見たことがない。

 気になったので「東急フライヤーズ」を調べてみた。今年のレジェンドユニホームは東映フライヤーズらしいが、「東急」はその前だ。ざっくり言うと昭和の高度成長期が東映、戦後すぐが「東急→急映→東急」のイメージ。

 1949年(昭和24年)はプロ野球史上、大きな動きのあった年で、1リーグ制最後のシーズンである。南海のエース別所昭(後に毅彦)の巨人引き抜き騒動があり、巨人は罰金10万円、別所には2ヶ月の出場停止処分が下される。またシベリア抑留中だった水原茂が帰国、後楽園球場でライバル・三原脩と感動的な再会を果たす。

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 前年、1シーズンだけ成立した「急映フライヤーズ」は結局また東急と大映に分かれた。「東急→急映→東急」というのはそういうわけだ。ちなみにこのときの大映スターズ(金星を吸収合併)は千葉ロッテマリーンズの前身のひとつだ。僕はロッテに強いシンパシーを持つが、何のことはない「昔、1年だけ結婚してた仲」なのだ。今でも大好きだよ!

 1949年、大映と別れ独身に戻った年(?)の「4月の大型連敗×2」、翌50年の「1試合7本塁打」は見てもいないのだけど胸につんと来る感じだ。看板スターの「青バット」大下弘はまだ20代。1949年は「ラビットボール」と呼ばれる元祖・飛ぶボールが評判になった。戦後まもない46年、大下弘が史上初めて20本台の本塁打を記録しファンの度肝を抜いたのだ。それがわずか3年後、ホームラン王の「物干し竿」藤村富美男(大阪)は46本を量産した。

 だから1950年の「1試合7本塁打」には「ラビットボール」の影響がなかったとは言いにくい。各球団のホームラン数が跳ね上がった時期だ。ただそんなの関係なく、1950年も嬉しかっただろう。2017年もウヒョウヒョだった。また相手がロッテだ。(今はお互い別々の道を行くが?)あの人の前では元気なところを見せたい。エース涌井秀章を打ち込んで、パ・リーグワースト記録の「個人1試合6被本塁打」をつけてしまった。

「昔、1年だけ結婚してた仲」のロッテ ©えのきどいちろう

1試合7本塁打を振り返る

 うちは肩痛からカムバックした浦野博司の登板試合だった。「チーム全員が浦野博司を応援した日」パート2だ。チーム全員の応援もここまで行くと花火大会級だ。テンポ良く投げて7回を4安打1失点で切り抜けた。復活登板以来、打線の援護に恵まれているが、この先、必ず1点勝負の試合がある。ひとつの四球が勝敗を分けることもある。浦野はそこにこだわりを持ってほしい。ナイスピッチング!

 下記が浦野を援護したホームランの内訳だ。ご査収下さい。効果的だったのは2死からの一発と、四球の走者を置いた一発。こうして箇条書きしただけでも心が弾む。

・大田泰示 2号(ソロ110m、涌井)
・近藤健介 3号(ソロ105m、涌井)
・レアード 8号(2ラン120m、涌井)
・西川遥輝 3号(2ラン110m、涌井)
・レアード 9号(2ラン130m、涌井)
・大田泰示 3号(2ラン120m、涌井)
・中田翔 3号(2ラン125m、大嶺祐)

「東急」から時代は下って1971年、当時の東映フライヤーズがロッテオリオンズ戦の延長10回表に「5者連続ホームラン」という日本記録であり、かつまた世界記録でもある偉業を成し遂げている。そのときの5人の打者、「作道烝、大下剛史、大橋穣、張本勲、大杉勝男」は伝説になっている(東京のオールドファンは負けてても「ここから5者連続ホ−ムランが飛び出せば……」なんて軽口を言ったものだ)。今回は球団史上、それに匹敵する快挙だと思う。

 大田が口火を切ったところに値打ちがある。大田は幸せだろう。じゃんじゃん併殺打を打っているが、栗山英樹監督は絶対引っ込めない。気持ちがポジティブになっている。凄かったのは右中間最深部へ放った3号2ランだ。大田自身が「初めて打ったよ、こんな当たり」と振り返ったほどだ。既に僕らF党は「大田の1試合2本」をこの目で見ている。巨人ファンが8年待望した夢が形になりつつある。

1試合2本塁打を放った大田泰示 ©時事通信社

 4割打者・近藤、光速剣・西川の弾丸ライナーにもしびれた。それからレアードは翌日に持ち越して「4打数連続本塁打」の日本タイ記録を達成したから、1ランク上の意味を持つ「マルチ」だ。ただ嬉しさの点では中田の「どうや、俺も打つわぁ〜」と言わんばかりの一発が格別だった。皆さんはどのホームランがお好きですか?

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