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2020/01/17

テロリストと、スーパー兵器の出会い

「もしすべてのテロリストが自分の行動を爆破、誘拐、暗殺、ハイジャックといった伝統的なやり口に限定しているならば、まだまだ最も恐ろしい事態にはならない。本当に人々を恐怖に陥れるのは、テロリストと、スーパー兵器になりうる各種のハイテクとの出会いだ」

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 つまり、ビンラディン式のテロリズムのほかにも、われわれは、ハッカー組織が仕掛けるネットテロや金融投機家たちが引き起こす金融テロなど、その他のさまざまなテロリズムに直面するだろうということだ。こうしたテロリストは、ハイテクがもたらした便利さを十分に利用して、彼らの手の届くいかなるところをも、血なまぐさい、あるいはそれほど血なまぐさくない戦場に変えることができるのである。ただ一点変わらないのは、恐怖である。しかもそれは神出鬼没で、忽然として形のない恐怖である。どの国もこのようなテロに対して、いちいちそれを防ぎようがない。

理解を超えた攻撃をしてくる敵にどう対応するか

 明らかにこれは伝統的な意義とは違う、全く新しい戦争の形態だ。私たちがこれを「非軍事の戦争行動」とネーミングしたとき、一部の軍事専門家から、「どんな戦術レベルの行動で、アメリカのような超大国を揺るがすことができるのか」と嘲笑された。彼らにとって、こうした問題は想像しようにも考えられないことだ、戦争はすなわち軍事であり、「非軍事の戦争行動」なんてロジックに合わないと考えていた。不幸なことに、テロリズム自体が最初から人類の善良な天性のロジックに合うものではない。さらに不幸なことに、こんなにも簡単な結論を理解するために、人類――今のところではアメリカ人――は血の代価を支払わなければならなかった。そしてついに結論が出た。アメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領は言った。「これは戦争だ!」と。

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 しかし、たとえわれわれが、これは戦争だとわかっていても、こうした戦争の発生を避けることは依然として不可能だ。なぜなら、これはすべての戦争の中で最も不確定な戦争であり、確定した敵も、確定した戦場も、確定した兵器もなく、すべてが不確定だからである。このために、常々確定した方式で敵を打撃するのに慣れている、いかなる軍事行動も、「虎が天を食べようとしても口に入れようがない」式の手のつけられない状況に直面することになろう。

『超限戦』の中で指摘したように、私たちから見れば、「ハッカーの侵入にしろ、世界貿易センターの大爆発にしろ、ビンラディンの爆弾攻撃にしろ、いずれもアメリカ軍が理解している周波数バンドの幅をはるかに超えている。このような敵にどう対応するか、アメリカ軍は明らかに心理上あるいは手段上、とくに軍事思想およびそこから派生する戦法上で準備が不足している」。同時に、たとえテロリズムに打撃を与える側がある時点、ある局面で、ある程度の勝利を得たとしても、もしテロリズムを根底から取り除くことができなければ、必ずや「ひょうたんをほうっておけば、ひしゃくができる」といった苦境に直面することになろう。問題は「テロリズムを根底から取り除く」ことだが、言葉で言うほど簡単ではない。