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「9・11を予言した」幻の本『超限戦』 なぜアメリカ軍人はテロ翌日に「必読」と語ったのか?

『超限戦 21世紀の「新しい戦争」』(角川新書)

2020/01/17
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「9・11を予言した」と大きな話題になった戦略研究書『超限戦 21世紀の「新しい戦争」』。中国現役軍人(当時)の喬良氏、王湘穂氏による全く新しい戦争論にして、アメリカの軍事戦略に大きな影響を与えたとされる「幻の1冊」が新書で復刊した。「9・11」の翌日にはアメリカの軍人がテレビで「必読だ」と語ったというこの本の凄みとは?

2001年9月11日に発生した、アメリカ同時多発テロ事件 ©ロイター/AFLO

「不幸にも予言が当たりましたね」

 私たちは予言者になることは望まなかったし、ましてや血なまぐさい現実となる可能性のあるテロ事件を予言する先覚者になろうなどとは思ってもみなかった。しかし、神様は、人々の多くの善良な願いを取り合わないのと同様に、私たちのこうした願いを取り合わなかった。 

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 2001年9月11日以後、私たちは数多くの電話を受けたが、一番多かったのは、「不幸にも予言が当たりましたね」という言葉だった。それは、ニューヨークのマンハッタンで起きた正真正銘のアメリカの悲劇を指していた。

©ロイター/AFLO

 3年前に、私たちが執筆した『超限戦』は、すでに正確な予言と判断を下していたが、これは本当に恐ろしい予言の的中だった。その恐ろしさから、私たちは、予言が見事に的中したからといって、少しも楽しい気分にはならない――天下に名の聞こえた世界貿易センタービルのツインタワーが、全世界の目の前で無残にも倒壊したとき、「あなたの正しさを立証した」と言われても、得意満面になることなど絶対にできない。何千という罪のない人々の命を一瞬のうちに奪ってしまうような、驚くべき残酷さは、われわれの個人的研究の成果に対する満足感をはるかに圧倒してしまった。

 これと同時に、私たちは深い悲しみと、いかんともしがたい思いを感じている。3年前、私たちはこの本の中で次のように明確に指摘していた。