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捜査の手をゆるめない尹検事総長に政権は慌てた

「曺国前法相の捜査の際は、メディア側も捜査が単なるパフォーマンスなのか、それとも捜査をきちんと進めようとしているのか、見極めるのに時間がかかりました。捜査の手をゆるめない尹検事総長にどうも本気で捜査しようとしているようだとなり、当初は様子見だった政権も慌てた。

 結局、曺国前法相は辞任しましたが、その後明らかになった、釜山市の経済副市長の特別監察もみ消し疑惑は、曺国前法相が青瓦台の民情首席秘書官だった時代に起きた。また、蔚山市長選挙への介入は昨年8月に青瓦台を去った任鍾晳青瓦台秘書室長が絡んでいる可能性が浮上している。実は、現在の蔚山市長と文大統領は人権弁護士時代からの旧知の仲で、文大統領も蔚山市長選挙への介入に関与しているのではないかという噂が出回っています。

 なりふり構わず尹検事総長を潰しにかかっているのを見ると、政権を揺るがすような爆弾が隠されているのではないかとする見方も出始めています」

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 特別監察というのは、青瓦台の民情首席秘書室傘下にある「特別監察班」が公職員の不正・汚職などを監察すること。李淵洛前国務総理は尹検事総長の特別監察まで指示したとされ、野党や検察内部から痛烈な批判が上がっている。

 しかし、こんな状況下でも文大統領は1月14日の新年の記者会見で、「曺国前法相の検察改革への寄与は大きい」とし「つらく苦しい思いをさせて借りができたように思っている」と話すなど曺国前法相をかばう発言に終始。尹検事総長については「人事に反発した」として強く批判し、また、その人事については、「法相と大統領の人事権は尊重されるべき」と話した。

2020年1月7日、「新年の辞」を述べる文在寅大統領 ©時事通信社

「人気」はうなぎ登り

 年明けから、4月に行われる総選挙への動きが本格化してきたが、釜山市、蔚山市捜査いかんでは与党に打撃となる可能性がある。奇しくも、釜山、蔚山市はもともと保守陣営が強い地盤。中道層の動きにも関心が高まっている。

 朴槿恵前政権時代は保守派から叩かれていたのが、今度は進歩派から疎まれる存在に。検事総長の任期は2年が保証されているが、尹検事総長の去就はいかに。

「人に忠誠を誓わない」尹検事総長の「人気」のほうはうなぎ登りで、次期大統領にという声も上がっている。