「歴史は巡るといいますが、この人事は尹錫悦検事総長に引導を渡したと言っているようなもの。ここまで露骨な人事は前代未聞です」(中道系紙記者)
1月8日、秋美愛法相が発表した検察庁幹部の新人事を巡り、韓国世論はまたまっぷたつ、騒然となっている。
検察の捜査を怖れ、あからさまな人事異動を強行
保守系メディアはトップで、「文政権捜査する『尹錫悦師団』大虐殺」(朝鮮日報、1月9日)「文政権、尹錫悦の手足を切り、親文(文政権寄り)配置、検察大虐殺」(中央日報、同)と激しく非難。進歩系メディアも、「尹錫悦師団総入れ替え、公正捜査の原則が揺れることのないよう」(京郷新聞、同)「検察の破格人事注目、公正な捜査は保証されなければ」(ハンギョレ、同)と文政権を諫めた。
秋法相就任による新たな人事異動で済州島、釜山などの地方に左遷されたのは、いずれも「尹検事総長師団」と呼ばれた尹検事総長の右腕ばかり。前出記者によれば、後任は、「曺国前法相に近い人物で占められた」という。
検察庁の人事は通常、法相や検事総長などが参席する検察人事委員会にはかられる。しかし、尹検事総長はこれを欠席。すると、秋法相をはじめ、与党はこれを「抗命」(命令に抵抗した)だとして、尹検事総長の懲戒処分を口にした。前出記者は言う。
「検察人事委員会開催の30分程前に尹検事総長を呼んだともいわれています。そもそも、検察人事委員会に出席しないだけで懲戒処分というのは前代未聞の話。しかも、今回の人事は尹検事総長の更迭までを狙ったもので、尹検事総長が現在進めている事件をうやむやにする目的であることは明らかです。それにしても、ここまであからさまな人事異動を強行した青瓦台と与党がなぜこんなにも検察の捜査を怖れるのか、そこに注目が集まっています」
「尹検事総長師団」が捜査した、あるいは現在捜査中の事件は、すでに裁判が始まった曺国前法相一家関連疑惑や釜山市経済副市長の収賄を青瓦台が把握しながらもこれをもみ消したという疑惑、さらに2018年6月に行われた蔚山市長選挙への青瓦台介入疑惑と、いずれも青瓦台絡みだ。