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2人の4割打者を比較してみると……

 2人の4割打者を比較すると、近藤はポイントを呼び込んでいて、インサイドアウトのスイングだ。基本は左中間の長打だろう。いちばんの長所は軸がぶれないこと。王柏融はポイントが前にある。アメリカや日本でやれば変化球に手こずると思う。が、センスは感じる。西武やロッテ、阪神が関心を持ってるようだが、21世紀の「王選手」としてスターになり得る存在だ。

 が、そんなことより僕は桃園国際棒球場でカルチャーショックを感じていた。ひとつには有名な「ラミガールズ」(CDデビューも果たした人気チアガール)の先導で球場全体が踊る応援風景(しかも、ロッテやハムのチャンステーマをブラッシュアップした選曲あり)だが、もうひとつは4割打ってる王柏融にどんどん勝負に行く台湾の野球スタイルだ。

 だって去年、4割打って今も4割超えてるバッターですよ。日本の感覚なら「4打席連続四球」でおかしくない。四球が多い(選球眼がいい)ことは率を残すことにつながるが、一方でなかなか打たせてもらえないなか調子を維持する苦労がある。去年は柳田悠岐がそれで苦しんだ。台湾にはそれがないようだ。

 僕はまさにこれが見たかった。「4割打者」が野球文化のなかでどう位置づけられているか。避けるべき存在か嫌悪すべき存在か。突然変異なのか技術的必然なのか。CPBLは打撃主体のリーグなのだ。元々、大らかな国民性を背景に1990年のプロリーグ発足からその傾向があったが、低迷期脱出をはかる今はもっとだ。勝負を避けない。力と力。真っ向対決なのだ。

 「4割打者」は単純な打撃論では語れないと思う。王柏融と近藤健介、2人の左打者の技術自体を比較してもあまり意味がない。(大げさな物言いだが)それをどう許容し、あるいは忌避する社会かを考える必要がある。王柏融は打って打って、記録を勝ち取る世界にいた。我がコンスケはしのいでしのいで、どうにか崩されず記録を残す世界にいる。それはどっちが上でどっちが下という話ではない。

 (やはり大げさな物言いだが)近藤健介は社会を変え得るだろうかと思う。ファイターズの歴史のなかで「これからはパ・リーグです!」の新庄剛志、「二刀流」の大谷翔平がそうであったように、野球の力で人々の意識が変えられるだろうか。帰国便のなかでそれを思った。野球はやっぱり素晴らしい。

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