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『ホルス』はラスト、最初は悪魔を恐れおののいていた村人たちが一致団結してラスボス・グルンワルド(声・平幹二朗)を倒すが、その製作現場でも同様のことが行われていた。

「あらすじが出来た段階で、みんなにあらすじについても意見を募るんです。あらすじの次に、『じゃあ登場キャラクターは?』ということで全員からアイデアを募る。そこで監督と作画監督がこもっている準備室みたいな部屋の壁に、出来たものをめいめい勝手に貼っていく。それで部屋中いっぱいになっちゃってね。皆そういう積極性がありました。

『太陽の王子 ホルスの大冒険』のセル画。© 文藝春秋

 出しっ放しじゃなくて、監督と作画監督を中心にキャラクター検討会を開いて。一つ一つ『このキャラクターはどれがいい?』、『これがいい』だけじゃなく、監督が『これとこれをくっ付けてみませんか?』といった具合に。髪飾り、ヘアースタイル、着物は言うに及ばず、『面白いからこの要素を採り入れたらどうか?』と有機的にね。普通はひとりの人間が考えたことで決まっちゃうんです。そうじゃなくて、みんなから出たものからまた膨らんでいく。そんな作業の繰り返しでした」

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“一致団結ぶり”は仕事の外でも存分に発揮

「バレー部や野球部、ソフトボール、バドミントン部などの社内部活もありました。会社が福利厚生として部費も捻出してくれて。あと、教養室という大きな広い畳の部屋がありまして、そこを使って茶道部、華道部もありました。僕は茶道部でした。お茶菓子が食べたかったので(笑)。

小田部羊一さん。© 文藝春秋

 絵画部もあってみんなでデッサンをやったり。ちゃんと隣りの東映の撮影所で演技指導する、専門家の先生をお呼びしたんです。そうしたら、当たり前のようにお茶が点てられるようになりましたよ。当時の東映(東京)撮影所には撮影用のオープンセットがあったんです。銀座の町並みとか時代劇で使うお城のセットもあったり。当時、映画の『ウエスト・サイド物語(ストーリー)』(’61年)が流行ったんで、銀座の町のセットを使って映画のマネをして踊ったり……そんな写真も残っています(笑)」

 今の企業の職場環境とはおよそほど遠いイメージだが、時には遊びが過ぎて羽目を外したこともあったとか。