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初めての2丁目は「レリゴー」状態だったけれど

七崎 それで言うと、私、ゲイバーの世界にあまり馴染めなかったの。初めて行ったときは『アナと雪の女王』のレリゴーばりの解放感で「すごーい! 楽しい!」って感じだったけど、結局文化に染まれなかった。新宿2丁目にも、規範意識があるじゃないですか。私は、ゲイの世界ではいわゆる「前髪系(*2)」になるらしいんだけど、「25歳以上は前髪系は厳しい」とか言われるし。

*2 前髪系……身体が細くて、容姿が可愛らしいゲイのこと。前髪が長い人が多いことから「前髪系」と呼ばれる。

 

もちぎ ゲイの世界って不文律、暗黙の了解が結構あるんですよね。身体が細かったりして、特定のビジュアルから外れると入店拒否されるゲイの店とかもあるし。ゲイが集まってるから開放的というわけでもなくて、婚姻制度がないから、「どうせ死ぬときは1人だし」みたいな、退廃的な雰囲気が残っているところもある。それが嫌、という人は多いと思います。

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七崎 たしかにそうかも。それこそ、2丁目で同性婚をめぐって喧嘩したこともありますよ。バーで「同性婚がしたい」と話したら、「ゲイだったら、それは違う」「1人で生きていきなさい」と言われたり。わがままな新人類だと思われたのかもしれない。

もちぎ 当たり前のことだけど、LGBTQコミュニティの中でも保守派の人もいて、一枚岩なわけではないんですよね。2丁目の文化も、変えていったほうがいいんじゃないかなと思う部分もある一方で、その文化を一生懸命守ってきた人たちがいるから存続してきている。だから、「女がいる店は嫌だ」とか「メディア露出しているゲイは嫌い」という人の気持もわかるし、それもまた社会なのかな、と。

ゲイ全体じゃなくて一人一人を見て

七崎 LGBTQの人が人それぞれっていうのも、よくわかります。最近言われてびっくりしたのが、「私、ゲイの人好きなんです」って。「いろんなゲイが居るけど、全部好きって言えるのか、お前」って。ほんと見せてやりたいよね、いろんなゲイを。

もちぎ ねえ。おもしろいゲイばかりじゃないし。

七崎 やっべえひともいるからね。

もちぎ 自分も普段から発信してることなんですけど、たとえばゲイの世界って男尊女卑が色濃く残っていたりもします。ゲイ風俗編の漫画で描いたんですけど、女性に対して性的な興味がなくても、性的加害をするやつもいる。女の子を下に見てるゲイはいるから。

 以前勤めてた店の客で、女の子の胸をもんだゲイがいたんですよ。

 

七崎 あるね。私も目の前でやってるの見たことある。「ゲイだからいいんだ」って言って、女の人の乳揉んで。

もちぎ そういうことを発信すると、「お前はゲイを敵に回した」ってDMがきたりするんですけど、ゲイ全体じゃなくて一人一人を見て、という気持ちです。それに、ゲイコミュニティ内部の問題について語っていくことって大事だと思うんです。

七崎 この前もちぎさんがマンガで書いていた、ネコ(*5)の話も気になりました。

*5 ネコ……セックスにおいてリードされる側のこと。同義語に「ウケ」がある。リードする側は「タチ」、リードする側もされる側もする人は「リバ」と呼ばれる。