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一人称「あたい」に隠された深~い理由

七崎 それで言うと、お会いしてびっくりしたのは、キャラクターと実際のもちぎさんのギャップの大きさ。漫画の中の「もちぎ」さんは、いわゆる“女言葉”を使う、ある種古典的なゲイ像ですよね。でも、実際は先進的な問題意識を持ってらっしゃるし、「あたい」とか全然言わないし……(笑)。漫画の「もちぎ」さんのキャラクターは意図あってのことだと思うんですが、なぜあえて古典的なゲイを?

もちぎ マツコ・デラックスさんの劣化版って言われることもあるんですけど(笑)、こうしたキャラクターが興味を持ってもらう入り口になれば、って思ってるんですよね。で、中身は、いわゆる“オカマ”のステレオタイプの真逆にしよう、と。

七崎 なるほど!

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もちぎさん(奥)

もちぎ 物事をズバズバ言う、人生経験豊富、女の人に対して厳しい、ファッションセンスがいい……ゲイに対してこういうイメージが世間に広まっているけど、自分はまさにその真逆だったから。悪口は言わないし女の人とは仲いい、センスは悪いし、自分だっていつも悩んでる。それをあの口調でやることによって、何か世間のこり固まった考え、テンプレートを壊せるんじゃないかって。

 あと、一人称が「あたい」なのは、当時まだツイッターで「あたい」って言葉が流行ってなかったからです。「あたい」といえばもちぎ、って覚えてもらえるかな、と思って。

七崎 めちゃくちゃ戦略的じゃないですか。

もちぎ 「もちぎ」のキャラクターは結構いろいろ考えて作ってます。国民的なキャラクターって、シルエットだけで「アイツだ」って分かるキャラクターが多いらしいんですよね。だから、「もちぎ」のキャラクターも、シルエットだけで分かるようにしようと思ってこの形になりました。

 

DMは1日200件、300件届く日も

七崎 そんなに考えているなんて、本当にびっくり……。もちぎさんは普段のSNSの発信でも、読者とどうコミュニケーションを取るか、意識しているように思います。DMを開放してらっしゃるんですよね。

もちぎ セクシャリティーのことだけじゃなくて、DV受けてますとか、虐待されてますとか、多いときは1日200件、300件来て……。最初は返信していたんですけど、一個人の意見で返信するのもどうなんだろう、と思い直して。でも、今でも全部、必ず見てます。

七崎 すごい! 私、DM来ないから。「本に出てくる占い師教えて」ってDMは来た(*1)。

*1……『僕が夫に出会うまで』では、高校生の七崎さんが占い師に「龍がついている」と告げられるエピソードが登場する。

もちぎ 開放してるのは、ゲイ風俗、ゲイバーの世界から視野を広げていきたいからでもあります。僕にとって、ゲイバー以外の世界への扉でもあるというか。