今回は「カールショック」について新聞各紙の伝え方をみてみたい。米空母カール・ビンソンのことではない。お菓子のカールのことである。
まずこちらの記事。
「カール もう食べられない? 売り上げ低迷 9月から西日本限定に」(朝日新聞・5月26日)
明治は、スナック菓子「カール」について、中部地方以東での販売をやめると発表した。
なぜ西日本では食べられるのかと言えば、現在は全国5カ所の工場で生産しているが、
《9月以降は松山工場(松山市)の1カ所で「チーズあじ」「うすあじ」のみを生産。滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県以西での販売のみとなる。》
この話題はSNSでも拡散されたのだが、新聞では張り切っていろんなネタに使われていた。
読売新聞名物コラムは「和歌」を引いて名残惜しんだ
まず読売新聞の「編集手帳」(5月27日)。1面にある名物コラムである。
《平安時代の和歌集『古今和歌六帖(ろくじょう)』にある。〈ある時は ありのすさびに 語らはで 恋しきものと 別れてぞ知る〉◆「ありのすさび」は、一緒にいることに慣れて相手の存在を意識せず、なおざりにすることをいう。「一緒にいるときは語らいもしないで、いとしい人だと別れてから知るのだ」。》
カールの名残惜しさについて、わざわざ「平安時代の和歌集」のネタから入る「編集手帳」!
これ、いつもの芸なのです。「編集手帳」の筆者・竹内政明氏は、
《「ああ、この話は、こういうテーマで原稿を書かなくてはいけないときに使えるな」といった感じで、とにかく「話の部品」を集めていくようにしています。》
と、自身の文章の書き方について語っている(『書く力』朝日新書、池上彰氏との共著)。
「カールショック」を知って今回は『古今和歌六帖』の引き出しをあけたのだ。
コラムの最後は三橋美智也の歌うカールのCMソングの話になり、もう完全に昭和のお菓子といった趣。