「あなた方は、私たちの声を聞いている、緊急性は理解している、と言います。私はそれを信じたくありません。もし、この状況を本当に理解しているのに、行動を起こしていないのならば、あなた方は邪悪そのものです」

 今やその一挙手一投足がメディアに取り上げられる、スウェーデン出身の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん(17)。彼女の言動が特に注目を集めたのは、昨年9月にニューヨークで開催された気候行動サミットでの“怒りのスピーチ”だった。

地球温暖化について警告するグレタ・トゥーンベリさん ©共同通信社

 サミットに集まった各国の代表達を、「私達は大量絶滅の始まりにいるのです。なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり」などと強烈に批判したのだ。

ADVERTISEMENT

 事実、地球温暖化は確実に進行しているものの、日本を含めた各国政府は具体的な対策を打ち出せていない。まさにそこに迫っている危機を、うまく認識できていないようにも映るのだ。

人類の歴史を捉えなおす「ビッグヒストリー」

「そんな時、『ビッグヒストリー』が大きな役に立ってくれるのです。この学問が与えてくれる広大な視野で世界を眺めてみれば、地球環境に今何が起こっているのかを、より深く理解できるはずです」

 こう語るのは、歴史学者のデイヴィッド・クリスチャン氏(73)。クリスチャン氏が1991年から提唱しはじめた「ビッグヒストリー」は、人類の歴史を、ビッグバンから始まる宇宙の138億年の歴史として捉えなおそうというものだ。

ビル・ゲイツ氏 ©AFLO

 マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は「ビッグヒストリー」に魅了された1人で、その普及のための教育プロジェクトに1000万ドル(約11億円)を出資している。

 クリスチャン氏が「文藝春秋」の独占インタビューに答え、ビッグヒストリーから見た気候変動の問題について解説した。

ホモ・サピエンスの誕生は100分前

 地球はその誕生時から数十億年もの時間をかけて、地表の温度を生物の存続に適したものになるよう調整してきた。ビッグヒストリーの観点から見れば、その地球の温度調節機能を、わずか20万年前に現れた“新参者”であるホモ・サピエンスが一気に破壊しているということになる。