〈最初に断っておくが、これは不愉快な本だ〉
挑発的な本書の書き出し。だがハッタリではない。努力は遺伝に勝てないのか? 見た目の美醜は人生を左右するのか? 子育てや英才教育はなぜ無意味になるのか? 聞こえのよい世間の良識に大胆にメスを入れる思索が綴られている。
「投資や金融の著作で人気の橘さんが進化論や脳科学の最前線から社会のタブーを書く。これはご本人の提案でした。詳しく聞いたときには、“差別”ともとられかねない、残酷で厳しいものだと感じましたね。でも現代の科学がタブーにまで踏み込んでいるのなら、覚悟を決めてその内容を世に問いたいと思ったんです」(担当編集者の丸山秀樹さん)
内容は危険だが、読み心地は滑らかだ。
「感情論ではなく、具体例とデータを示しながらも、論文調ではない、エンターテインメントの文章に仕上げている。そこが橘さんの魅力ですね。また、『極論で話題になればいい』という方でもないんです(笑)。不愉快でも、タブーを知ることがよりよい社会を実現するステップになると考えているんですよね」(丸山さん)
大手テレビ局のプロデューサーが「面白いけど誤解が怖くて、番組化は不可能」と感想を寄せる一方、40代以上の読者からは、「祖父母から言われたことを思い出す」という声も。“不愉快”なだけでなく、どこか懐かしく普遍性のある知見であることもヒットの要因か。
2016年4月発売。初版1万5000部。現在12刷30万部