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検察が見せた意地

 そんな状況下でも、検察は捜査を続けていた。

 昨年12月31日、曺被告を文書偽造など11の罪で在宅起訴したのに続き、1月17日にも職権乱用などの罪で追起訴。3度目の大統領府捜索も行った。

 第2弾の検察人事が発表された1月23日には、ソウル中央地検が、大統領府民情首席秘書官室の崔康旭(チェ・ガンウク)公職紀綱秘書官を、業務妨害の罪で在宅起訴した。曺被告が大統領府民情首席秘書官だった2017年当時、崔秘書官が弁護士として曺被告の息子のインターン活動に関する確認書(高麗大学と延世大学に提出されて、ともに合格)を虚偽作成したという疑惑についての罪だった。

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 まさに検察の意地である。だが、検察は今回の“報復人事”によって、捜査体制の縮小や解体に遭っており、状況は日に日に厳しさを増している。今後の捜査に支障が出ることは不可避だろう。

文政権の「弱点」となったのが曺国前法相の疑惑だ ©AFLO

強硬人事は「総選挙対策」

 公約に検察改革を掲げていたものの、文在寅政権がここまで躍起となり検察組織にメスを入れた背景には、4月15日に控える総選挙がある。

 4年に1度行われる、文在寅政権では初めての総選挙は、後半に入った政権への審判の意味合いがある。ここで左派系与党の「共に民主党」が敗れれば、政権末期に向け文在寅政権のレームダック化が進むことさえあり得る。

 その文在寅政権が最も避けたいのが、曺被告の疑惑が続く中で総選挙を迎えることだ。政権にとって最大の「弱点」を引きずるくらいなら、強引さが指摘されようとも検察人事を思うままに断行して捜査体制を解体するという予防策をとった、というわけだ。

 最近の各種世論調査によれば、文在寅大統領は40%台後半の支持率を維持している。だが、与党「共に民主党」の現有議席は129で、定員300の半数に届いていない。国会では6割以上の賛成がなければ法案は上程できないため、改革志向の強い文在寅政権としては、総選挙で過半数を獲得したいところだろう。

 1月中旬は総選挙に向け出馬する公職者が辞任しなければならない期限だ。大統領府では、新年に入ってから、文在寅大統領からの信頼が厚い幹部らが続々と出馬のために辞職している。

 文在寅大統領の最側近とされる尹建永(ユン・ゴンヨン)大統領府国政企画状況室長のほか、元KBS女性アナウンサーとして知名度が高い、高ミン廷(コ・ミンジョン)報道官も辞任した。文在寅政権下で大統領府にいた秘書官ら約70人が出馬を目指しているともいわれる。

チョ・グク疑惑関与の候補者も?

「共に民衆党」候補者の選挙区は党内の予備選挙を経て決定する。同党では、1月16日までに367人が予備候補に登録しているが、このうち約3分の1が大統領府や中央省庁、地方自治体など公的機関の幹部だったという。

 国民年金公団理事長、中小ベンチャー企業振興公団理事長、国土交通省次官ら公職者が大挙して辞職し、公的な地位にいた経験を選挙戦に利用する姿に対しては、世論も冷ややかに見ている。