中国の新型肺炎の感染拡大が加速している。
中国国家衛生健康委員会は26日、新型コロナウイルスによる肺炎の中国本土における発症者が26日午前0時の時点で1975人となり、うち死者は56人、重症者は324人と発表した。僅か24時間で発症者は688人、死者は15人増加。26日に感染者が2000人に達するのは確実で、近日中に3000人に達する可能性も現実味を帯びてきた。感染が疑われる事例の報告も1309人増えて計2684人となり、感染拡大の勢いはさらに強まっている。
こうした事態で、人類が経験した最悪のケースはスペイン風邪である。スペイン風邪は、インフルエンザ・パンデミック重度指数(PSI)において最上位のカテゴリー5(致命率2.0%以上)に分類される。スペイン風邪の流行期間は、2年近くに及んだ。折悪しく、今回の新型肺炎感染は中国の春節で国内外に拡散・撹拌され、今後どのような帰趨を辿るのか注目される。
香港の「緊急事態」宣言には“デモ対策”の一面も?
中国の新型肺炎感染拡大を睨み、早くも外交安保面でそれに“便乗”する動きがあった。香港政府の林鄭月娥行政長官は、25日に中国に先駆けて最高レベルの警告である「緊急事態」を宣言した。また、香港ディズニーランドは26日、当面の間休園すると発表した。
筆者には、これらの決定はデモを鎮静化させるための策謀に見える。それが事実であるならば、中国・習近平からの差し金に違いない。習近平は新型肺炎感染拡大の渦中にあっても、中国の戦略的な課題に対して休むことなく布石を打っている可能性がある。油断ならない指導者だ。
新型肺炎は韓国と北朝鮮にどんな影響を与えるか?
一方で、中国の脅威・圧力に晒されている台湾でも、新型肺炎感染拡大を奇貨とする動きがみられた。台湾南部・高雄の衛生当局が、武漢滞在を隠した患者に30万台湾ドル(約110万円)の罰金を科すと表明したのだ。これは、政権2期目をスタートさせた蔡英文総統が授けた計策かも知れない。蔡総統は台湾への感染拡大を警戒し、厳しい姿勢を鮮明にしている。
だが、これも一種の対中戦略で、国際社会・台湾国内に向け「コロナウイルスの恐怖」と「中国の脅威」のイメージを重ね合わせることによって、同政権に対する中国の圧力をかわそうとする狙いがあるように感じる。
新型肺炎感染拡大で特に注目されるのは韓国と北朝鮮の動向だ。貿易立国の韓国経済は中国に大きく依存しており、感染拡大で中国経済がダメージを受ければ、それは直ちに韓国経済にも波及するのは必至だ。それは、文政権を揺るがす事態となろう。4月に総選挙を控える韓国では、そこで政治の流れが変わる可能性もある。