物を送られても「要らない」と書いて送り返す
内田 どうしてもといって送ってきちゃう人には、メモ用紙に「要らない」って書いて送り返すんですよ。それを見ていた私の気持ち、わかります? 胃がこんな小っちゃく縮んじゃって。
中野 うんうん。
内田 お年玉にしても、「お年玉っていうのは玉なんだ」という。でも、私の育った80年代なんてバブルで、みなさんがお年玉の袋に1000円札を何枚か入れたりしていたじゃないですか。そういうお年玉をいただくと、「返しに行ってきなさい」って言うんです。だから、私はお年玉が貯まらないんです。
中野 すごいですね。先ほどから、すごい、すごいと言ってばかりですが、なぜ「すごい」と言ったかというと、科学の話になって恐縮なんですが、これは創造性を育てるためにすごくいい教育じゃん、と思って感動していたんです。
内田 そうなんですか?
中野 確かにこれは本阿弥光悦が生まれるわ、と思って。
内田 教えてください。私の人生はこれでよかったんでしょうか。
樹木希林流子育ては脳科学的に意味がある
中野 すごい、すごい。すごいですよ。創造性を測る試験というのがあって、どういうふうにやるかというと、例えば、ここにペンがあります。このペンの使い方を、ものを書く以外の用途でどう使うかというのを単位時間内、例えば30秒で何通り思いつくか。それでその人の創造性を測るんです。
内田 母だったら絶対、ものすごい数を思いつく。
中野 すごく得意だと思うんですよね。これは創造性の試験として研究ベースでも採用されているものです。これを鍛えるということが今、結構な課題でして。
内田 そうなんですね。私の暗い過去がちょっとだけ報われた気がします(笑)。
中野 希林さんはすごい教育してるなと思いました。
内田 でも、極端過ぎるのもやっぱりちょっとトラウマティックというか。
中野 なるほど。昔にさかのぼって、子どもの頃の也哉子さんに「脳科学的には意味があるよ」って教えてあげたいですね。
内田 教えてほしかったです。本当に、亡くなる直前まで、それこそティッシュ一枚でも、ちゃんと使い切って捨てた。靴下でも、古くなってきちゃったらそれを切って開いてクイックルのペーパーを挟むところにセットして、そこら辺をきれいにしてから捨てる。「物にも冥利がある」っていつも口癖のように言っていました。
私はそういうストイック過ぎる母を見てきて、じゃあ自分は今、同じようにやっているかというと、実は、真逆とまではいかないですけど、やっていない。
中野 わかる(笑)。