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初日に上司が「残業代・有休なし」宣言 都立墨東病院の元薬剤師が明かす“壮絶パワハラ”

労基の指導が入っても「“自己研鑽”しなさい」

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「話し合いでの解決」を求めても誠実な対応はなかった

 その後、退職を決意したAさんは、「話し合いでの解決」を求めて、病院側との交渉に移った。しかし、その場になっても東京都・病院側の対応は誠実とは言えないものだった。担当の笹山尚人弁護士(東京法律事務所)が語る。

「最初、墨東病院さんには『関係資料を示してほしい』ということと、『この問題について話し合いで解決できるのか』も申し入れ、病院側も『話し合いで解決したい』と答えていました。

 しかし、賃金の問題は時効があります。また、話し合いにあたってはタイムカードや超過勤務申請書(東京都職員が超過勤務を申請する書類)などがどうしても必要です。なかなかお願いしている資料も示していただけないまま、話し合いが実現することはありませんでした。何度も説明しましたが、返答もなく、もう途中からは東京都に真面目に答える気はないんだな、と思いました。

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東京都立墨東病院を運営する東京都庁 ©iStock.com

 これ以上待っていても話し合いでの解決も不可能と判断し、裁判に踏み切ったという経緯があるのです」

地下の当直室で「薬剤科はチームで動いているのに」

 退職間近、「1年目は、有給休暇はとれない」という独自ルールにより、あまりに余った有給休暇を消化しようと、当たり前のように申請したAさん。

「薬剤科には薬剤科長と、その下に管理主任・調剤主任の3トップがいます。その3人に3、4度呼び出され、『全部取ることは許可できない』『次の仕事のため仕方なく休みを取らせてあげているのに、それを分かっているのか』『あなただけ特別扱いはできない』と言われました。なので改めて、確実に私がいなくても現場を回せるという日を選んで、申請しました」

 すると、再び管理主任と調剤主任に呼び出されたという。

「昼休みに地下の当直室に呼び出されました。2人ぐらいがやっとの狭い場所で『何を考えているんだ』『なんて自分勝手なんだ』『薬剤科はチームで動いているのに、チーム全体のことを考えられないのか』と一方的に問い詰められ、黙ってうなずくことしかできませんでした」

©iStock.com

 こうして、最後の有給休暇さえもすべてをとることは許されなかった。30日以上の有給休暇日数が残っていたという。