文春オンライン

「募ってはいるが募集はしていない」 ちゃんと説明されない“3大事件”を安倍首相の「私情」で読み解く

恨み、友情、贔屓……巨悪ではないがせこい

2020/01/31
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「ちゃんと説明されない」件で、まず思い出す3人

「ちゃんと説明されない」件では例の3人も興味深い。河井案里、河井克行、菅原一秀である。最近やっと人前に姿を現したが、何も説明していないとブーイングが飛んでいる。

1月20日、記者団の質問に答える河井案里氏 ©︎時事通信社

 しかし、あの3人が表舞台に出てこなかったのは「説明を避けた」のではなく「口を封じられていた」可能性も考えたほうがよい。出てくるな、しゃべるな、と言われていた可能性を。

 腐っても選挙で当選した政治家である。地元にはいち早く釈明し、おわび行脚をしたかったはずだ。それすらせずに雲隠れというのは政治家の本能としてあり得ない。

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安倍首相が忘れない「恨み」

 そもそもなんで岸田派の牙城である広島に同じ自民党からわざわざ「新人」(河井案里)がおくりこまれたのか?

 こちらの記事を読めばわかる。

「安倍は広島の仇敵を許さない 岸田が悩む“仁義なき戦い”」(「週刊文春」2019年6月27日号)

 首相はかつて、広島が地盤の溝手顕正氏(岸田派)に痛烈に批判されたことがあった。

溝手顕正氏 ©︎文藝春秋 

《安倍氏は、そうした恨みを片時も忘れない。》

 こんなにわかりやすい理由だった。敵は野党ではなく自民党内にいたのだ。

 当時の新聞にも書いてある。

《河井氏は首相や菅氏に近い河井克行・党総裁外交特別補佐の妻で、菅氏が出馬を後押しした。》(日本経済新聞2019年7月23日)

 そして先週あらためて出たのが、河井夫妻の政党支部に「参院選前のわずか3カ月間で計1億5000万円が振り込まれている」という報道だ(「週刊文春」1月30日号)。官邸の力の入れ具合が「金額」で証明された。

 この事実には自民党内からも反応が出ていて面白い。朝日新聞の記事(1月25日)から抜粋する。

・竹下派の参院中堅は「刃向かう者は全力でつぶすという首相の残酷さがあらわになった選挙だった」

・別の若手議員は「僕らは立法事務費も政党交付金も党に召し上げられている。我々のカネでよく分からない人に肩入れした党本部、官邸にみんな憤っている」

・同じ参院選で当選した麻生派の中堅も「官邸に近い関係にあれば優遇されるのか」と語る

 さすがに選挙のおカネだけに敏感な反応がずらり。こんな一文も。

《党関係者は「幹事長が一つの選挙区に動かせる資金にしては額が大きすぎる」とし、首相官邸の意向が働いたことを示唆する。》